インフレが個人実質所得をさらに押し下げる

そして、個人実質所得が急落する可能性が高いことは、この間消費者物価上昇率が年率10%近い水準まで加速していることからも明らかです。

裸の王様にされてしまったアメリカの消費者たち
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

第一次コロナショックの起きた2020年には年率6~8%という高水準に達していた実質賃金伸び率は、2021年以降下落に転じ、直近ではマイナス4%近い大幅な低下となっています。

それにつれて、一時は可処分所得の35%にまで達していた貯蓄率も直近では4.4%と、21世紀に入ってから個人世帯貯蓄率が慢性的に低迷する傾向の中でも、低いほうにサヤ寄せしています。

堅調な小売売上高を支えているのは?

勤労所得が実質ベースでマイナスに転ずるなかで、小売りが着実に伸びている理由はひとつしかありません。個人世帯が借金をして商品を買いつづけていることです。

裸の王様にされてしまったアメリカの消費者たち
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

ご覧のとおり、2020年9月以降個人世帯の総債務は増加(つまり新規借入額が返済額を上回る状態)が続いており、2022年に入ってから増加額も非常に高水準を維持しています。もっと気になるのは、最近の総債務の伸びを、クレジットカード分割払い分とその他の比較的長期の借り入れに分解すると、分割払い分の伸び方が大きいことです。

裸の王様にされてしまったアメリカの消費者たち
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

住宅ローン、自動車ローン、学費ローンのように長期にわたる元利返済を必要としない分だけ気軽に借りてしまうのでしょうが、与信チェックもほとんどしない反面、延滞時の金利は17~19%と懲罰的な高さになっています。

コロナショック後の消費の高まりで特徴的なのは、工業製品や農林水産物といったモノ消費が急激に伸び、逆にこれまで順調に伸びつづけてきたサービス消費が低迷を余儀なくされたことです。