オーダーメイド型人材育成を

では、どのような関わり方や研修がZ世代の成長をより加速するのでしょうか。結論から申し上げると、1人ひとりの個性に合わせた「オーダーメイド型育成」です。

今までの日本企業では、マス教育などで画一的・横並び的に平等性を意識しながら育成しようとしていました。そこでは、全員に対して組織のやり方や考え方に従わせるような教育を施し、効率的に社員をマネジメントしようとしてきました。要するに「組織に社員を適合させる」発想です。

しかしながら、Z世代は幼少期からそのような環境で育っていません。1人ひとりの個性を重視し、多様性が尊重される環境で育ってきた世代です。

彼らに合ったマネジメントの仕方は、今までのような「個性を押し殺すマネジメント」ではなく、1人ひとりの個性を伸ばしたり自律性を発揮させる「個性発揮型マネジメント」が必要になります。

ここでは、個性発揮型マネジメントの具体的なやり方についてご紹介します。従来の個性を押し殺すマネジメントと対比しながらご説明します。

例:お客様へのクレーム処理対応のシチュエーションにおいて

〈個性を押し殺すマネジメント〉

上司「クレーム処理はこのようにしなさい」

部下「私なりにもっと〇〇のように対応したいと思うのですが・・・」

上司「いや、良いから私の言うことを大人しく聞きなさい」

部下「上司の言うようにやってみたけど、案の定うまくいかなかった・・・。」

「良いアドバイスもしてくれないし、もうこの人の言うことは話半分に聞いておこう」

〈個性発揮型マネジメント〉

上司「クレーム処理にあたって、何を大切にしたい?」

部下「我々側の落ち度も認めつつも、これまで下請け的な対応をされてきたので、今回を機に、対等なパートナーな立場になれたら良いなと思います」

上司「了解。そのような関係になれるために、どう動けば良いと思う?」

部下「我々の口からはっきりと、パートナーになるために、いくつかの改善提案もしようと思います」

上司「了解。では、上司として私の方からしっかりと謝罪はしておく。その後、担当者として、〇〇さんもしっかりと謝罪しよう。その後に、これまでフロントに関わってきた〇〇の想いをタイミングをみて伝えようか。何かあったら私もサポートするので」

部下「かしこまりました!ありがとうございます」

といった具合に、一方的に命令・指示を出すのではなく、

・何を大切にしたい?

・そのために、何をする?

・(上記の部下の価値観を尊重した上で)最低限のアドバイス

その人の価値観と行動を結ぶ問いかけをするのが効果的です。

ここで興味深いのは、「何を大切にしたい?」と問いかけて、一生懸命答える人と、わかりませんと答える人が明確に別れます。一生懸命答える人が「社会的自律」「組織内自律」の状態にある社員になり、わかりませんと答える人は「依存」状態のことが多いです。

当然、依存状態にある人に関しては、問いかけをしても難しいことが多いので、1つひとつ指示を出す必要があります。

このように、マネジメントに関しては、1人ひとりの能力や成長度合いに応じて、オーダーメイドの育成プランが求められるでしょう。それは上司や人事部の負担を増加させますが、Z世代以降の人材には、このようなマネジメント方法でなければ通用しなくなるはずです。

自分なりの意思や想いを大事にしながら行動を実践し、結果に繋がる体験を続けると、その人ならではの「素質」が垣間見えてきます。 この素質を活かすマネジメントこそ、オーダーメイド型教育の最大のゴールになります。

この素質には4つのパターンがありますので、後編にてご紹介します。


著者プロフィール

黒澤伶

株式会社ITSUDATSU

代表取締役

早稲田大学人間科学部卒。デル株式会社(現:デル・テクノロジーズ株式会社)、株式会社ビズリーチ(現:ビジョナル株式会社)、コーチングファーム取締役を経て、株式会社ITSUDATSUを創業。「ITSUDATSU(非直線的な現象)を再現性の高い世の中にする」という大義の下、要人材を起点とした独自の組織活性方法で累計300以上のプロジェクトを推進。現在、複数社の取締役CHRO(非常勤)を歴任。