「モチベーションアップのために、どのようなアプローチが効果的なのかがわからない」

「我々の世代の考え方と異なり、従来のマネジメントのやり方が効かなくなってきたように感じる」

これは、管理職やリーダーの方々が頭を悩ませる問題です。

1990年代後半以降に生まれた「Z世代」が、新入社員として職場環境で働く時代になりました。Z世代とVUCA、さらにはコロナ禍。世代と環境の両方のダイナミックな変化を受けて、企業の新人・若手育成はより一層難しくなっています。

今回は、「人間の本質(Human Nature)」をビジネスに活かす組織戦略家集団である株式会社ITSUDATSUの代表取締役・黒澤伶氏に、「Z世代のマネジメントの成功の秘訣とは(前編)」についての考察をご寄稿いただきました。

※後編はこちら

Z世代を取り巻く時代の急速な変化

まずはZ世代を取り囲む環境の変化を知るところから始めていきましょう。

VUCAワールド(Volatility/不安定・Uncertainty/不確実・Complexity/複雑・Ambiguity/曖昧性)という言葉が象徴するように、現代は目まぐるしく、かつ、急速に変化する環境の真っ只中にいます。

さらに、リモートワークの普及、副業の解禁、人生100年時代による就労期間の長期化等を要因とし、人々の価値観や仕事観も大きく変化しています。そうした組織と個人の変化の中で、人と組織の関係や結びつき方も、これまでとは違う大きな変化が見えつつあります。

これまでは、「雇う側-雇われる側」という関係性が当たり前でした。したがって、従業員に労働力の提供を求め、その代償として賃金を支払う側の経営者と経済的な報酬の見返りとして労働力を提供する従業員側での利害が生まれていました。

だからこそ、そもそも働く個人の仕事に対する動機付けの問題には関心がほとんどなく、むしろ性悪説的な考えのもと、いかに人を管理、コントロールして縛らねば人は怠けてしまうのではという考えが主流でした。

そうであるがゆえに、さまざまな制度や規則といった外的な報酬や強制力によって「いかにして人を動かすか」、という考えの経営者も多いでしょう。

さらにキャリア開発という側面では、日本企業では終身雇用を前提とした長期的な展望に基づき、組織がポストやキャリア・パスをつくり、従業員は一律的な昇進・昇格を目指していく「組織内計画的キャリア開発」が進められてきました。

そうした環境においては、個人は組織内の昇進・昇格といった外的基準を軸に、長期的に能力やスキルを積み上げていくことで、安定的に立場を上がっていくことができます。

しかしながら、未来のビジネス環境を見通すことができない今日において、組織で働く誰もが、終身雇用を前提にしたり、昇進・昇格・昇給といった上方向へ長期的展望をもったりすることは難しいです。

さらに、昨今のリスキリングなどの学びなおしの重要性が主張されているように、デジタル化やテクノロジーの進化、目まぐるしいビジネス環境の変化によって、これまで必要とされてきた知識や専門性、スキルの価値が失われることも頻発し、個人が長期的に計画を立て、直線的に能力やスキルを積み上げていくことも難しくなりました。

上方向への長期的な計画に基づくキャリア開発が難しい現在、キャリア開発はより方針の変更やニーズの変化などに機敏に対応するものへとなります。

常に組織内に限られた、昇進・昇格などの上の一方向を目指すのではなく、それぞれの多様なキャリアゴールに向けて、臨機応変に組織内外の上下横を移動して、柔軟に経験を積んでいくことが大切になります。

従来のように組織内でより高い責任をもつ役職へ昇格したいときもあれば、現在の仕事の中で新たなチャレンジに取り組むことや、自身の視野とネットワークを広げるために別の部署やプロジェクトに横移動してみることが、自分自身の成長機会になることもあります。

むしろ、一般的には降格とみなされるシフトが、自身のキャリアにとっては豊かな経験につながる場合もあるでしょう。

​​このように、「組織中心軸の世界」から「個人中心軸の世界」に変化していき、現在はその大転換の真っ最中です。

ここで注目したいのが、Z世代は、生まれたときからこの「新パラダイム」で育った初めての世代ということです。Z世代は、これまで企業の当たり前だった「組織中心軸の世界」には馴染まない傾向をもち、これから企業が変換しようとする「個人中心軸の世界」に最も適応します。

このZ世代の新たな労働価値観に即した育て方・活かし方を考えることは、単に新人育成という枠を超えて、マネジメントのあり方をアップデートする機会にもなると考えます。