ここで対象としているのは、経済主体ごとの金融資産や負債です。固定資産は含みませんのでご注意ください。
本来は固定資産も含んだ正味資産として評価すべきと思いますが、統一的に扱った統計データがないためご容赦ください。
経済主体は家計、企業、政府、金融機関、海外の5つです。
取引項目は、現金・預金、貸出(借入)、株式等、債務証券、年金・保険、その他です。
1年間の各経済主体の金融取引を記録したものが、資金循環統計でのフロー表となります。
各主体の金融取引の結果、正味の金融資産(金融資産・負債差額)が増えたか、減ったかを示すのが資金過不足です。
経済主体ごとの資金過不足の総和は必ずゼロになります。
資金過不足がプラスだと黒字主体(資金余剰)で、その1年で金融資産が負債よりも増えて、純金融資産が増えたことを示します。
資金過不足がマイナスだと赤字主体(資金不足)で、純金融資産が減り、他の主体の純金融資産の増加に寄与したことになります。
その時点までの金融資産・負債残高を記録したものがストック表です。
各経済主体の金融資産と負債の残高(時価額)を記録しています。
その差額が純金融資産(金融資産・負債差額)となり、経済主体ごとの純金融資産の総和は必ずゼロになります。
純金融資産がプラスだと金融資産が負債を上回った状態となります。
純金融資産がマイナスだと、負債が金融資産を上回った状態で、他の主体の純金融資産の代わりに負債を引き受けている事になります。
金融資産と負債の差額は日本の統計だと金融資産・負債差額と表記されますが、本ブログでは純金融資産と呼びます。
プラスの時は純金融資産、マイナスの時は純金融負債とも表記する場合がありますので、ご留意ください。
基本的に各経済主体の挙動は次のようなものが想定されます。
家計: 金融資産(現金・預金、株式など)と負債(主に住宅ローン用の借入)が増え、純金融資産が増えていく主体 企業: 主に負債(借入、株式など)が増え、純金融負債が増える主体 政府: 主に負債(債務証券:国債)が増え、純金融負債が増える主体 (ただし、純金融資産が増える国も多い) 海外: 主に対外証券投資、対外直接投資の対象で、それぞれの国の状況により純金融資産がプラスにもマイナスにもなる。純金融資産がプラスの場合は、当該国が海外から投資を受けている状況で、対象が企業か政府かは区別されないが、純金融負債が増えている主体がどちらになっているかで推測はできる
企業が純金融負債を増やして、家計が純金融資産を増やすというのが先進国の経済の基本形と言えそうです。
ただし、純金融資産は時価額で評価され、企業の株価変動の影響を受けます。企業の負債のうち株式は借入と並んで大きな割合を占めます。
その株式の変動が、企業の株価変動による影響なのか、新株発行などによる株数の変動による影響なのかが、ミックスされていて切り分けできないため注意が必要ですね。
今回は、資金過不足と純金融資産のグラフを見比べることで、このような面も一緒に確認していきたいと思います。
資金過不足では企業が黒字主体でも、企業の純金融負債が増えるようなケースもあります。
この場合は、当年での金融取引の結果よりも、株価の上昇によって、企業の負債側に計上される株式が増加し、正味の純金融負債が増えるというケースがあり得るためです。
あらかじめ申し上げると、アメリカやカナダはこのようなケースに当てはまると想定されます。
逆に、家計が赤字主体でも、純金融資産が増えていく国なども存在します。その年投資した以上に、金融資産の値上がりによって純金融資産が増えているという事が考えられます。
上記のような前提を踏まえて、各国の資金過不足と純金融資産の推移を眺めてみましょう。