キャッシュレス決済の普及に伴って、お財布を「ミニサイズへ買い換える」人や「持たない」人が増える中、長財布を利用する中高年は依然として多い。大人はどうして長財布や現金を持つことにこだわるのだろうか。

若者と中高年、人気の財布を比較

株式会社 DIGITALIO が運営するデジタルギフト「デジコ」が実施した調査結果から、若者と中高年の財布所持率の違いを見てみよう。

調査は、Z世代を対象としたマーケティング活動を行う「Z世代研究会(ゼトケン)」と共同で実施された。調査時点(2022年10月)で25歳までの対象者をZ世代とする。

現在使用している財布の形状について世代別に調べたところ、Z世代の「長財布」の利用率は約2割と他の世代と比べて著しく低い。一方で、コンパクトな「ミニ財布・三つ折り財布」の利用率は約4割と他の世代よりも高かった。

反対に、50歳以上は「長財布」の利用率が最も高く5割以上を占め、「ミニ財布」は1割にも満たなかった。

1.なぜ中高年はいまだに財布を持つのか?

財布を出すのが面倒なZ世代

「買い物時に感じるストレス」として当てはまるものを聴取したところ、Z世代は「財布を出すのがめんどくさい」と感じている人が5割以上を占め、他の世代と比較して多かった。一方で50歳以上は最も少ない2割未満で、財布の出し入れにストレスを感じる人は少ないことがわかる。

(表2)

2.なぜ中高年はいまだに財布を持つのか?

Z世代にとって、支払い時に財布を出さずにスマホのみで決済を行えるキャッシュレス決済は面倒な手間が省ける魅力的な手段で、今後もZ世代の間で需要が高まることが予想される。

Z世代はキャッシュレス&ミニサイズ

調査結果から、Z世代は財布の出し入れによるストレスが軽減することを重視し、キャッシュレス決済に順応していると考えられる。現金を持ち歩く機会が減るため、財布も小さいサイズへ移行するのは自然だ。

一方で50歳以上においては長財布の利用率が過半数を占めていることから、キャッシュレス決済よりも現金決済のほうが多いと考えられる。そもそも50歳以上の人は、キャッシュレス決済の必要性や利便性をあまり感じていないのかもしれない。

なぜ中高年はまだ財布を持つのか?

もともと長財布には、お金持ちというイメージがあった。

長財布は中身が少ないと薄くて不恰好になってしまうため、お札やクレジットカードをパンパンに入れられる人が持つもの、つまり「お金持ちが利用する財布」というイメージが定着していた。昔の映画に出てくるお金持ちのお財布も、長財布が多かった。

また、長財布は金運を呼び込むともいわれており、お金持ちになりたい人は長財布を使うという傾向もあった。このようなイメージも、時代とともに変わってきている。

長財布はダサい?時代遅れ?

一部では、長財布を持つことを「ダサい」と捉える人も出てきている。

Twitterでは、以下のようなツイートも見られる。「奥様より『このキャッシュレスの時代に、いまだに長財布を使ってるなんてダサいよ』と言われた。」「長財布使ってるんだけど、キャッシュレスのこの時代に長財布はダサいという記事を見た...そうなの!?皆、財布は小さくしてるor持たなくなってるの?!」

どうやらキャッシュレスが普及した現代においては、かつての「お金持ち」のイメージよりも、「まだキャッシュレスに順応できていない時代遅れの人」と映るようだ。

想像してみるとわかりやすいだろう。キャッシュレス決済のほうが、現金よりも決済手続きが速い。レジに長い列ができている中、分厚い長財布を取り出して現金で支払っている人よりも、スマホで一瞬にして決済する大人のほうが、よっぽどスマートに見えるはずだ。

長財布にはメリットもある

もちろん、長財布にもメリットはある。長財布はカード・お札・コインが一方向で取り出せ、パッと見れば現金がいくらあるのか大体わかる。また、通帳なども入れて管理できることもメリットだ。

折り財布に変えた人の中には、「コインやお札を出す際にお財布の向きを変えなきゃいけないのが意外と慣れない」という声もある。現金利用者にとっては、一目で財布の中身を確認できる長財布の利便性は捨てがたいのだろう。

現金を使う理由1位「慣れているから」

「ナビナビ保険」が実施した調査では、「普段買い物をする時に、主にキャッシュレスか現金どちらを使いますか?」という質問に対して、560人のうち、64.5%の人がキャッシュレス決済、35.5%の人が現金と回答した。

現金を使っている人の理由の1位が「現金に慣れているから」で、2位が「現金のほうが管理しやすいから」だった。

中高年は「キャッシュレス」にこだわっていないだけ

Z世代はキャッシュレス決済を便利と感じてミニ財布に移行したが、なぜ中高年は長財布・現金決済にこだわるのだろうか。それは、現金を利用してきた年数が圧倒的に長い世代にとって、慣れ親しんだそれをわざわざ手放してまで、キャッシュレスに移行することにメリットを見出せないからだろう。

現金決済にこだわっているわけではなく、キャッシュレス決済にこだわっていないだけということだろう。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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