逮捕される人とされない人の違い
ニュースなどを見ていると、同じ罪名なのに逮捕される人と逮捕されない人がいることがあります。法律に詳しくないと「なぜ同じ罪なのに、あの人は逮捕しないの?」と疑問に思うでしょう。
逮捕される人・されない人の違いは、「逮捕の要件を満たしているか」という点にあります。
先ほど、逮捕には3つの種類があり、それぞれに要件があることを説明しました。逮捕は、法律によって定められた要件を満たした場合のみに行われる強制的な処分です。そのため、逮捕の要件を満たしていない場合は逮捕できません。
また、逮捕の要件を満たしているかどうかは、数値のような明確な基準があるわけでなく、事件の内容や被疑者の年齢・境遇などを総合考慮して判断されます。
例えば、独身の人よりも結婚して子どもがいる人のほうが、家族を残して逃げられないという意味で逃亡のおそれが低いと考えられますし、被疑事実(疑われている内容)を認めていない被疑者は、釈放されると共犯者と口裏合わせなどをして罪証隠滅を図ろうとする可能性が高いと考えられます。
ほかにも、事件や事故で怪我をしていたり、病気を患っている被疑者は逃亡のおそれが低いといえるでしょう。
上記は一例ですが、事件の状況、被疑者の状況、年齢などによって、逮捕の要件を満たすかどうかは変わってくるのです。
そのため、同じ罪名でも逮捕される人と逮捕されない人が存在します。
また、逮捕に関するよくある誤解が「捜査は逮捕が原則」という認識。この誤解も「なぜ同じ罪なのに、あの人は逮捕しないの?」という疑問のもとになります。
日本の捜査は、任意捜査(在宅捜査)が原則です。このことは、刑事訴訟法第197条第1項や、犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)の第99条に書かれています。逮捕や勾留といった身体拘束は人権を制限する強力な処分ですから、本当に必要な場面でのみ使える仕組みになっているのです。
■ 「逮捕=有罪・逮捕されない=無罪」ではない
逮捕に関してよくある間違いが「逮捕=有罪・逮捕されない(書類送検)=無罪」というもの。
「書類送検されたあとはどうなる?」でも解説したとおり、書類送検された場合でも、起訴されて有罪になる可能性は十分あります。
つまり、逮捕されてもされなくても、「警察官や検察官が捜査→検察官が起訴・不起訴を判断→起訴された場合、有罪か無罪」という大まかな流れは変わりません。違いは、身体拘束があるかないかだけです。
また「逮捕=懲罰」でもありません。悪い犯人だから逮捕しているのではなく、あくまでも逃亡や罪証隠滅のおそれがあるから逮捕しているのです。