ラテラルシンキングが注目される背景
ラテラルシンキングが注目される背景には、「VUCAの時代」や「イノベーションのジレンマ」といった時代の変化が挙げられます。これらの概要と、ラテラルシンキングとの関係について解説します。
VUCAの時代
VUCA(ブーカ)とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った言葉です。現代はVUCAの時代と呼ばれ、一言にまとめると、変化が多く不確実な時代といえます。
たとえば現代ではIT技術やAIが急速に進歩し、雇用の減少や変化、価値観の多様化などが起こっています。目まぐるしく変わる社会で生き残るには、企業も個人も、変化に柔軟に対応できなければなりません。
ラテラルシンキングはひとつの出来事やひらめきを水平方向に広げていき、今までにないアイデアを生み出す思考法です。これが変化の多い現代で生き残るために役立つとして注目されているのです。
VUCAの時代について、以下の記事でも詳しく解説しています。
イノベーションのジレンマ
イノベーションのジレンマとは、大企業が顧客の意見を取り入れ製品やサービスを改良・開発することで、イノベーションの面で後れを取るという考え方です。
規模の大きな企業は社会的な注目度や顧客に対する責任も大きく、スタートアップやベンチャーに比べて動きが遅くなってしまいます。イノベーションや新規事業を起こそうとしてもスピード面で後れを取るうえ、既存事業とのカニバリゼーションも考えなくてはなりません。
加えて、他社が起こしたイノベーションにより、既存の市場が崩壊してしまうこともあります。たとえばデジタルカメラという新技術の登場により、カメラフィルムの市場は崩壊し、多くの企業が苦境に立たされました。このような、既存市場を崩壊させかねないイノベーションを破壊的イノベーションと呼びます。
固定観念や前例にとらわれず、アイデアを広げていけるラテラルシンキングは、イノベーションのジレンマを乗り切るために有効です。
たとえば先ほどのカメラフィルムの例でも、富士フィルムは自社の技術を活かしてデジタルカメラや医療用画像システムなどの新規事業を展開することで、イノベーションのジレンマを乗り切っています。
「うちは大手だから大丈夫」「今さらほかの事業でやっていけるだろうか」と考えるのではなく、「自社のアセットを活かして何ができるだろうか」と多角的に考えることが重要です。