実業家の与沢翼氏の著書「秒速で1億円稼ぐ条件」など、大金を短期間で稼ぐ方法については何かと議論され、さまざまな書籍が出版されている。しかし、短期間で大金を稼げるということの裏側には、短期間で大金を失うリスクも潜んでいる。秒で億単位の金額を損する方法についても考えてみたい。

FX(外国為替証拠金取引) レバレッジは最大25倍

短期間で大金を手にする方法の代表格といえば、FX(外国為替証拠金取引)だろう。

FXは「Foreign Exchange」の略称で、他国の通貨を買ったり売ったりし、為替レートの変動によって生じる差益を狙う取引だ。

なぜFXが大金を狙える手法かというと、レバレッジ取引が可能だからだ。レバレッジとはテコを意味する英語のレバーから派生した言葉で、テコの作用、テコの原理などと訳す。

投資の世界では、投じる資金の金額以上の取引が可能になる仕組みを「レバレッジが効く」などと表現し、例えば、レバレッジが10倍だと、10万円のお金を用意すれば100万円分の取引が可能になる。このとき用意する取引の担保となるお金(10万円)を証拠金という。

日本国内でのFXのレバレッジ取引に関しては、金融庁により最大25倍までと規制されている。つまり、最大レバレッジ25倍のFX取引では、10万円の証拠金で250万円分の売買が可能になるというわけだ。

ドル円相場は1日で5円動くことも

このFXのレバレッジ取引で、1億円を短期間で失う状況をシミュレーションしてみる。

2022年12月20日、日本銀行は長期金利の変動許容幅を、従来の0.25%から0.5%に拡大することを決めた。この決定を市場は事実上の利上げと受け止め、ドル円相場は1ドル137円台だったのが、一気に1ドル132円台に急騰した。

この場面で、ドル円は円安方向に動くと想定し、レバレッジ25倍で137円のドルを2,000万通貨購入したとする。この際、必要な保証金率を4%と仮定すると、必要保証金は137円×2,000万通貨×4%=1億960万円となる。

この取引事例ではドル円相場が1円円安に動くと2,000万円の利益が生じ、反対に1円円高に動くと2,000万円の損失が生じる。132円に急騰するまで持ち続け、132円で損切りしたとすると、その損失額は1億円という計算になる。

仮想通貨に投資、ずさんな経営で資金回収不能のリスクも

ボラティリティ(価格変動率)が大きい仮想通貨も、短期間で大金を稼ぐこともできれば、短期間で大金を失うことも可能だ。特に、仮想通貨の場合は、誕生から今日に至るまでの歴史が浅い。仮想通貨の取引所の中にはずさんな経営から破綻に追い込まれる事業者もいる。

その典型例が2022年11月11日に経営破綻した仮想通貨交換所大手のFTXだ。FTX創業者のサム・バンクマンフリード氏は滞在先のバハマで現地当局に逮捕され、ニューヨークの連邦地検が詐欺など8つの罪で同氏を起訴した。

起訴状によると、バンクマンフリード氏は顧客の資金を自身が保有する投資会社の経費や債務の支払いに充てたり、不動産購入のために流用したりしたという。仮想通貨関連のニュースサイトがFTXの財務の健全性を問題視し、別の仮想通貨交換所大手バイナンスがFTX発行資産を清算すると発表したことで、投資家が次々と資金を引きあげる動きにつながった。

FTXの負債総額は推定100億ドル~500億ドルとされており、FTXに預けた資産を引き出せなくなった投資家は少なくない。もし、FTXに1億円以上を投資していたら、今頃はそのお金を取り戻せなくなっていた可能性もある。

海外カジノで大損、ギャンブル依存症に

短期間で大金を失った事例は他にもある。

一瞬にして億単位のお金が消えてしまうのが海外カジノだ。2011年に当時の大王製紙会長だった男性が会社法違反(特別背任)容疑で東京地検特捜部に逮捕された事件を記憶している人もいるだろう。

男性は社長在任中の2010年~2011年にかけて、シンガポールやマカオのカジノで100億円以上を使い込み、そのうち数十億円を子会社から不法に借り受けていた。男性は刑期を終えた後もカジノに身を投じ、大金を失ったことを明かしている。

また、サッカーの元イングランド代表、ウェイン・ルーニー氏もオンラインカジノなどでおよそ5カ月の間に約1億円の損失を出した経験を明らかにしている。大金を手にした有名人がギャンブル依存症に陥り、大金を失うのは世界で共通して起きている出来事だ。

稼げるチャンスの裏には失うリスクも リスク管理が重要

これまで、FX、仮想通貨、海外カジノで短期間のうちに大金を失うリスクをみてきた。もっとも、これらの手段で大金を稼ぎ、億万長者入りを果たした成功者も中にはいる。大金を稼げる可能性の裏には大金を失うリスクが潜んでおり、リスク管理の重要性を物語っている。

文・MONEY TIMES編集部

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