新型コロナウイルスの影響で身につけるのが当たり前になったマスクだが、海外ではマスクをしない日常が戻りつつある。日本でもマスクなし生活への回帰が待ち望まれる中で、脱マスクに向けた過渡期の位置付けとして注目されているのが「透明マスク」だ。2023年、透明マスクブームは来るか?

マウスシールドとは似て非なる「透明マスク」

透明マスクとは、マスクの形状を維持しながら中央部に透明なフィルムを配置し、口元や顔の表情を見えるようにしたマスクのことだ。

似たような口元を覆う保護具としてマウスシールドがあるが、マウスシールドは口や鼻を覆うように肌に密着するマスクとは異なり、シールドと口元・鼻元とのすき間が大きい。そのため、飛沫の拡散を防止する効果は限定的、あるいはほとんど効果がないと考えられている。

一方、透明マスクは鼻から頬の周辺までをしっかりと覆い、すき間をつくりにくい構造となっているため、飛沫の拡散防止効果は高い。マウスシールドとは似て非なる商品だ。

河野太郎デジタル相と堀江氏のツイートで炎上

透明マスクといえば、河野太郎デジタル相が着用し、実業家のホリエモンこと堀江貴文氏がそれに反応したことが一時、話題となった。発端は堀江氏が2022年8月に河野氏の透明マスク姿について「この気持ち悪いマスクは何のためにしてるんでしょうか」とツイートしたことだ。

これに対し、河野氏は「このマスクですが、聴覚障害の方々との意見交換会の時に口元が見えるようにとのご要請で、つけることにしたものです」と説明し、さらに「そのまま電車に乗ったものですから、東海道線や新橋駅で今日はいろんな人にずいぶんとジロジロ見られるなあと思いましたが」とツイートした。

堀江氏のツイートに対しては一般ユーザーから「配慮が足りない」などと批判が寄せられたが、堀江氏は「ノーマスクでやれよ」と悪びれる様子もなく、一連のやりとりがツイッター上で炎上した。

コミュニケーションに影響を与えるのは視覚情報が55%

河野氏がツイッターで指摘したように、透明マスクは聴覚に障害を持つ人らがマスク越しでは口元の動きが見えず、コミュニケーションを取りづらいという課題から開発された。

もっとも、透明マスクは河野氏と堀江氏のツイートで話題となる前から活用が進んでいた。例えば、気象庁は2021年10月ごろから、地震などの自然災害に関する緊急の記者会見で、担当者による透明マスクの着用を始めていた。

災害に関する気象庁の記者会見は緊急性が高いだけに、聴覚に障害を持つ人らから「マスクを外してほしい」「口唇の動きで情報を読み取ることができる」といった声が寄せられ、透明マスクの着用につながったという。

マスクの着用により相手の表情が見えづらくなることに困っていたのは聴覚障害者だけではない。介護の現場でも、介護士の表情が見えないことが、被介護者の不安につながっていた。

人と人とのコミュニケーションでは、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%の割合で影響するメラビアンの法則というものがあり、コミュニケーションにおいて表情が果たす役割の大きさがうかがえる。

脱マスクに向けた機運はとぼしい日本

脱マスクが広がりつつある海外に比べて、日本では脱マスクに向けた機運はとぼしい。

厚生労働省は「マスクの着用について」と題したホームページで、「屋外では季節を問わず、マスクの着用は原則不要です」と方針を示しているが、「屋内では距離が確保でき、会話をほとんど行わない場合をのぞき、マスクの着用をお願いします」とも呼びかけている。

就職や転職に関する研究・調査を行う「Job総研」の「2022年日本人の脱マスク意識調査」によると、今後のマスクの着用について、29.2%が「無条件で着用」すると回答し、68.4%が「状況に応じて着脱」すると回答した。状況に関係なく「着用しない」と回答した割合はわずか2.4%で、日本人のマスク着用意識が高いことがうかがえる。

脱マスクへの過渡期で注目される透明マスク

こうした状況の中で、透明マスクは日本社会が脱マスクへと向かう過渡期において、広く受け入れられる可能性がある。

長引く新型コロナウイルス禍の中、マスク越しのコミュニケーションにストレスを感じている人は少なくない。表情が見えない、もしくは出せないと、お互いがうまく相手が考えていることを少なからず理解しにくくなるからだ。表情が見える透明マスクへのニーズが高まったとしても不思議なことではない。

衛生用品大手のユニ・チャームは手洗い可能の透明マスク「顔がみえマスク」を1,480円(税込)で販売しており、アマゾンなどでも透明マスクは購入可能だ。

マスク越しのコミュニケーションにストレス… 透明マスクは一考の価値あり

透明マスクは飛沫の拡散を防止しながら着用者の表情も見えるようにする優れもので、日本社会が脱マスクに向かう過渡期において普及する可能性もある。マスク越しのコミュニケーションにストレスを感じている人は、透明マスクを試してみてもよいだろう。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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