年が明けて、テレビや新聞などで「春闘(しゅんとう)」という言葉をよく聞くようになった。
実は春闘は、毎月の給料やボーナスの金額に影響を与える可能性があるため、会社から給料を受け取っている人にとっては無視できない重要な問題だ。そこで本記事では、春闘について解説する。
春闘とは?
春闘の正式名称は「春季生活闘争」で、労働組合が企業に対し、賃金や賞与、労働時間、その他労働条件などについて改善を求めて経営者側と交渉することを指す。
労働組合から企業に対して労働条件に関する要求が出始めるのが2月、要望に対して企業側からの回答が3月頃になることから、春季の生活闘争といわれている。
労働組合とは?
労働組合は、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織する団体」。すなわち労働者が団結して、賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るためにつくる団体だ。
なお労働者が、経営者側と対等に話し合うために労働組合をつくる権利や加入できる権利(団結権)、労働組合と経営者側と労働条件について交渉する権利(団体交渉権)、労働条件改善に向けて、仕事をせず団体で抗議する権利(団体行動権)は日本国憲法第28条で認められている。
給与との関わり合い
春闘は労働条件に関するさまざまな交渉が行われるが、主な交渉内容はやはり給与に関するものだ。
労働組合が行う給与の交渉には、従業員の勤続年数や年齢に応じて毎月の給与を増やす「定期昇給」と、定期昇給のベースとなる基本給全体の水準を上げる「ベア(ベースアップ)」の2種類がある。
例えば、基本給25万円の会社で1万円ずつ定期昇給を実施していれば、基本給が翌年26万円になるが、この会社が1%のベースアップを実施すると、基本給は25万2,500円となり、翌年は26万2,600円になる。
定期昇給の場合、従業員の基本給は上昇するが、毎年一定数の退職者もいるため企業側にとっては賃金総額の変動はあまりない。
一方、ベアは従業員の変動がなければ賃金総額は毎年上昇していくことになるため、企業側にとっては負担が大きくなる。
どんな会社がどんな“闘い”をしているのか?
経営者側は、春闘で労働組合から従業員の賃金や労働条件について交渉された場合、同業他社の動向を見て、足並みをそろえた回答をする傾向がある。
また単独の労働組合で経営者側と円滑に交渉を行い、要求を通すのは難しいこともあることから、労働組合側も春闘に向けて綿密に準備を進めていく。
具体的には春闘の準備は前年のうちから進め、日本最大の労働組合の全国中央組織である「連合」や、同一産業内の複数の労働組合が共同する「産業別労働組合(産別)」の方針に基づいて、単体の労働組合で要求をまとめ、要求提出日、企業側の回答日を調整する。
結局、私たちの給料にどう影響しているのか
春闘による要求内容が経営者側に認められれば、それ以降は給料や労働条件の改善が見込まれる。
厚生労働省発表の令和4年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況によると、令和4年の賃上げ率は全産業平均で2.20%、令和3年度は1.86%、令和2年度は2.00%だった。
あくまでも平均なため、すべての人の給料アップを示すものではないが、春闘は着実に私たちの給与上昇にプラスの影響を与えているといえそうだ。
参考:厚生労働省ホームページ
文・金子賢司(ファイナンシャル・プランナー)
立教大学法学部卒業後、東証一部上場企業に入社。その後、保険業界に転身し、ファイナンシャル・プランナー(FP)として活動を開始。FPの最上級資格CFP資格を取得し、個人・法人のお金に関する相談を受けながら、北海道のテレビ番組のコメンテーターなどとしても活動している。
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