高コストな技術が並ぶ
原子力以外の、具体的な技術のリストを見ると、かなり心配になる。
「参考資料」は技術開発・普及のロードマップになっている。このようなロードマップ自体は、以前から経産省をはじめとして各省庁が「グリーン成長戦略」などとして検討していたものの焼き直しで、さほど目新しさはない。そして「基本方針(案)」も大半はその羅列になっている。
その技術のリストを見ると、再生可能エネルギーを大量導入する(約31兆円~)、それによって水素を作る、あるいは水素を海外から輸入して燃料として使い製鉄する、海外の水素からアンモニアを合成して輸入して火力発電燃料にする(約7兆円)、海外の水素でメタンを合成して輸入して天然ガスを代替する等(約3兆円)、―――となっている(図)。

図 GX実行会議第4回資料より
だがこれらはいずれも、万事順調に技術開発が進んだとしても、既存技術に比べて大幅に高コストになりそうだ。高コストになる理由はエネルギー工学の原理的なところに由来するものなので、そう簡単には解決しそうにない。どの技術も、これまでの常識を覆すような相当な発明が幾つもないと解決しないような難しい課題を抱えている。
太陽光や風力発電などの変動性の再生可能エネルギーに投資したからといって、能動的に出力を変動できる火力発電が要らなくなる訳では無い。従ってその価値はせいぜい火力発電の燃料費分しかなく、必然的に二重投資になる。この欠点を補うために送電線を建設しバッテリーを設置するとしているが、これもコスト要因になる。
また再生可能エネルギーで生産する水素を輸入するとなっているが、これが安価になる見通しは立っていない。さらに、日本に輸入するために水素を液化するというが、これには莫大なエネルギーがかかり、これもコスト高になる。液化する代わりにアンモニアやメタンにするというが、この化学反応をさせるにはそのための工場が余計に必要になるし、ここでもエネルギーを使うのでロスが発生する。
基本方針(案)では、こういった技術について、研究開発するための費用、そして社会実装するための費用まで政府が補助をする、としている。のみならず、出来上がったエネルギーはどうやっても既存のエネルギーに比べて高価になるので、その価格差を埋めるための補助金まで出す、としている。まるで政府丸抱えの様相だ。
もちろんこれには巨額の費用が必要であるし、日本はますます高コスト体質になるので、経済成長に資するとは考えにくい。
順調にいっても高コストにしかならないような見通しであれば、当該技術については、当面の間、政府の役割は基礎研究の支援に止めておくべきだろう。
政府がグリーン成長と言い始めたのは2009年の民主党政権にさかのぼる。当時の目玉は太陽光発電の大量導入だった。その帰結として、いま年間3兆円の再エネ賦課金の負担が発生している。経済成長に資するどころか重荷になっている。基本方針(案)が、これを何倍にして再現するものに陥ってしまうことが危惧される。
そもそもグリーン成長というのが虚構である。CO2を削減するにはコストがかかるのが当然だ。RITEの試算では、2030年に△46%という数値目標達成のためには、約30兆円のGDP損失が発生するとされている。(RITE資料、p8)