税金のことに詳しくなくても、いたるところで耳にする「確定申告」という言葉。「なんのことかは全く知らない……」「とりあえず税金計算に必要なことは分かる」など、制度の理解度もさまざまです。

実際、確定申告は非常に複雑な制度として知られていますが、フリーランスとして働くうえでは避けて通れない制度でもあります。なぜなら、確定申告ができないと正しく納税できず、気づかないうちに脱税してしまうリスクがあるからです。

そこで、今回はフリーランス初心者を対象に、はじめての確定申告で意識すべきポイントをまとめてみました。

フリーランスが読むべきはじめての確定申告ガイド【FP監修】
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

監修:齊藤颯人
FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身も現役フリーランスで、当事者ならではの情報発信に強み。

目次
確定申告とは
確定申告の種類

確定申告とは

フリーランスが読むべきはじめての確定申告ガイド【FP監修】
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

確定申告とは1年間(1月1日~12月31日)の所得から所得税額を計算し、税務署に申告する制度のことを指します。納税額を「確定」させて税務署に「申告」するから確定申告、と考えて問題ありません。フリーランスの確定申告の提出期間は翌年の2月16日から3月15日までとなっています。

細かい話になりますが、税金の計算方法には、国や自治体が税額を確定させる「賦課課税制度」と、納税者自らが税額を確定させる「申告納税制度」の2通りがあります。名前からも想像できるように、日本の所得税は後者の方式を採用しているので、自分で確定申告をする必要があるのです。

しかし、こんな疑問を抱く方もいるかもしれません。「会社員なら年末調整で済むのに、なんでフリーランスは確定申告しなきゃいけないの?」と。

すでに見た通り、企業も所得税相当(この場合は法人税)の計算は企業側で行う必要があり、国で税額を決めてくれるわけではありません。しかし、企業には経理担当者がいる場合がほとんどなので、彼らが代わりに税金の計算や申告をやってくれるのです。フリーランスはそういった会計面も含めて、自分で事業を運営する必要があります。

確定申告の種類

「確定申告」と一言で言っても、じつは申告方法に細かい種類の違いがあります。「白色申告」と「青色申告」と呼ばれるもので、以下ではそれぞれの特徴を整理します。

白色申告:比較的ラクだが損をする可能性が高い

フリーランスとして開業した際、特に申請を出さなかった場合は自動的に白色申告での申告となります。

白色申告は、青色申告に比べると申告にあたっての縛りがゆるく、ラクな申告方法というのが最大の特徴です。帳簿付けや伝票の保管は義務付けられていますが、青色申告よりも帳簿付けがカンタン(単式簿記)で、提出書類が少なくて済むことがメリット。

フリーランスが読むべきはじめての確定申告ガイド【FP監修】
(画像=▲単式簿記と複式簿記で全く同じ取引を記帳した例、『Workship MAGAZINE』より引用)

単式簿記はほぼ家計簿のような感覚でつけられるため、そこまで苦戦することはないのではないでしょうか。

一方、白色申告はラクなぶん、損をする可能性が高い申告方法でもあります。控除額はわずか10万円しかなく、青色申告に比べると税額がそれなりに増えてしまいます。

また、白色申告の場合、そもそも帳簿付けや帳簿の保管義務がなかった時代もありました。しかし、近年ではそれらも義務化されるなど制約が増えており、将来のことを考えるとあまりおすすめできる申告方法とはいえません。

青色申告:大変だがおトクな申告方法

フリーランスが「青色申告承認申請書」を提出し、承認されると青色申告を利用できます。

青色申告は白色申告と対照的に、記帳や申告の厳格さが求められます。とくに帳簿付けの方法は、「貸方」「借方」などの概念が登場する、複雑で難しい帳簿(複式簿記)に。さらに青色申告決算書の作成や長期間(最長7年間)の帳簿保存義務なども発生し、手間はかかります。

しかし、こうしたデメリットを打ち消して余りあるメリットがあるのも青色申告。一番のメリットは、青色申告を行うと最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられること。白色申告の10万円と比べれば55万円の差額であり、「55万円分の所得にかかる所得税がゼロになる」と考えれば、効果の大きさがわかるかもしれません。

フリーランスが読むべきはじめての確定申告ガイド【FP監修】
(画像=▲青色申告の節税効果例(出典:国税庁)、『Workship MAGAZINE』より引用)

その他も数多くの特典があり、まとめると以下のようになります。

  • 最大30万円までの資産を一度に経費にできる
  • 事業の赤字を3年間繰り越せる
  • 家族に支払った給与を妥当な額で経費にできる
  • 一括で貸倒引当金を計上できる

さらに、昨今はクラウド会計ソフトの進化により、白色申告とほとんど変わらない難易度で青色申告ができるようになりました。総合的に考えて、これから確定申告を行う場合でも、さっそく青色申告からスタートすることをおすすめします。