極めて大きな可能性を秘めている一方でいまだ理解されておらず、弱点も多数抱えている……そんなSHOWROOMとライブ配信アプリについて、ウェブメディア編集長の立場からメディアビジネスとしてビジネスモデルを深掘りしてみたい。
※本稿はライブ配信アプリの基本的な仕組みからビジネスモデル、SHOWROOMの仕組みと問題点、決算書の分析、広告を入れられない理由など多岐にわたって解説や分析した。SHOWROOMに興味がある人や実際に使っている人はもちろん、まったく興味が無い人でも企業分析の記事として読めるように書いた。
そもそも「ライブ配信アプリ」とは何か?
SHOWROOMのトップ画面 執筆時点
SHOWROOMはライバーと呼ばれる配信者が生放送の動画コンテンツを提供するアプリだ。秋元康氏が絶賛と書いたようにAKBグループや坂道シリーズとつながりが強い事でも知られる。
SHOWROOMのアプリを開いて最初に目に入るものはAKB48や乃木坂46のメンバーが配信をしているという告知だ。各グループのメンバーはSHOWROOMでアカウントを多数開設している。執筆時点ではAKB48の18期生オーディション開催が告知されている。
配信でどれだけファンを獲得できるか、それがオーディションで課せられたテストとなっている。過去にはAKBグループのオーディションの他、坂道シリーズ全体のオーディション(坂道合同オーディション)、秋元康プロデュースのガールズバンドのオーディションも行われている。
ファンをどれくらい獲得できるか採用前に実力を見る、という意味ではSHOWROOMでオーディションは合理的とも言える。
他にもアイドルやタレントなど多数の著名人が配信をしている。ただ、これはぱっと見で分かる、ある意味で「表の顔」だ。
配信者の多くは無名のアイドルやタレント、ミュージシャン、あるいはその志望者だ。SNSと同様にリスナー(ユーザー)は興味のあるライバーをフォローすると、配信が開始された際に通知が届く。ライバーとのコミュニケーションは原則としてコメントの書き込みのみ、視聴は無料で応援したいと思えば有料・無料の「ギフト」を投げる。いわゆる「投げ銭」だ。
ライブ配信アプリの会社はリスナーが投げるギフトから発生する手数料が主な収入となる。リスナーは直接お金を投げるのではなく、一旦「ギフト」と呼ばれるアイテムを購入する。
SHOWROOMの有料ギフトは一つあたり1円から2万円まで種類も金額も様々だが、以前は東京タワーを模した1万円のギフトが最高額だった。タワーが投げられると高額かつ非常に目立つことから、ライバーもリスナーも「タワーが建った!」と大騒ぎになる。
ライバーの取り分は条件により異なるが概ね30%程度、リスナーが千円分のギフトを投げればライバーは300円の収入、という仕組みだ。差額がライブ配信アプリの収入となるが、アプリストアの購入であれば当然手数料は差し引かれる。
簡単に説明したが、これらの基本的な仕組みはどのアプリもほぼ変わらない。SHOWROOM以外にも17Live、ポコチャ、BIGO LIVEなど多数のライブ配信アプリがある。筆者が知らないものも含めれば国内だけでも数十個はあるだろうか。2020年からはショート動画アプリとして有名なTikToでもライブ配信機能が提供されている。元々は本国の中国で提供されていたが、時間差で日本でもサービスを開始した。
で、他のサービスには無いライブ配信アプリならではの特徴って一体何なの?という事になるが、それが「ファンとの交流」だ。
ライブ配信アプリはファンと交流するためにある。