
SHOWROOMの配信画面・AKB48小栗有以さん(AKB48/OUC48「おうち公演」をSHOWROOMにて独占配信中!SHOWROOM株式会社・公式リリースより 2020年5月1日 )
ライブ配信アプリのビジネスモデルとその弱点
先日、ライブ配信アプリを運営をするSHOWROOM株式会社が六期連続の赤字であると話題になった。
2013年、当初DeNAの事業としてスタートしたSHOWROOMは2015年に分社化されている。社長に就任した前田裕二氏は作詞家の秋元康氏や幻冬舎社長の見城徹氏から経営手腕を絶賛され、書籍「メモの魔力」は70万部超のベストセラー、各種メディアにも多数出演するなど会社としても経営者としても一見順調に見える。
しかしSHOWROOMは何年も前から恒常的な赤字に悩まされていた。分社化以降、一度も黒字化していない。ベンチャー企業が規模拡大やシェア獲得、ユーザー獲得を優先してあえて赤字を出すことは珍しくないが、本文でも参照した前田氏のインタビューを読む限り意図した赤字ではなさそうだ。
2022年3月期の決算では利益剰余金が約41億円のマイナスとなっている。利益剰余金はざっくり説明すると過去の利益をどれだけ積み上げてきたかを示す数字だ。それがマイナス、つまり41億円の累積赤字という説明になる。ライブ配信アプリはコロナ禍で巣ごもり消費の恩恵を受けてもよいはずが、前期から20億円以上の赤字が上乗せされている。
SNSで六期連続の赤字が話題になった際には以下のようにサービスの存在自体に疑問を投げかけるコメントも多数見られた。
「ライブ配信アプリってそもそも何のためにあるの? 生配信ならインスタグラムとかフェイスブックとかYouTubeでもできるのに、存在意義が全く分からない」
この指摘自体は間違ってはおらず、音声だけならばTwitterやクラブハウスでもライブ配信は可能だ。ただ、これはSHOWROOMを始めとした「ライブ配信アプリ」がどんなサービスなのか、その本質を知らない人のコメントでしかないが、多くの人が同じような感想を持っていると思われる。
そもそもサービス内容が理解されていない
ライブ配信アプリのウリが伝わっていない
こんな状況はサービスの拡大にマイナスであることは間違いなく、ライブ配信はまだ一般的なコンテンツと言える状況ではない。
SHOWROOMの赤字はライブ配信アプリのすそ野が拡大途上にあることも影響しているが、もう少し深掘りすると赤字の原因は大きく二つに分けられる。SHOWROOM個別の問題と、ライブ配信アプリそのものが抱える利益を出しにくい構造的な問題だ。
特にライブ配信アプリの構造的な問題として「広告が入れられない」という、広告収入が柱となるメディアのビジネスモデルとして致命的な弱点を抱えている。さらにはライブ配信・生放送であることが大きな強みであると同時に大きな弱点にもなっている。
SHOWROOMの苦境を見ていると、これらの問題や弱点の克服が難しい、場合によっては問題の区別できていない、もしかしたら気が付いていない可能性もあるのではないか、と心配になってしまう。
SHOWROOMの赤字は偶然ではなく必然である。これが筆者なりの結論だ。