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事故当時の東電幹部に13兆円の賠償を命じる(世界最高額の)判決

東日本大震災に伴って発生した福島第一原発事故から11年余、その深刻かつ重大な被害から今も逃れられない多くの被災者がいる。事後発生時からこれまでの間に、故郷からも我が家からも引き離され、失意のうちに亡くなった人も少なくない。

東京電力の当時の旧経営陣に対して、事故を発生させた責任の所在を明らかにし、法的責任を追及しようとする動きの前に、日本の法制度の壁がたちはだかった。業務上過失致死傷罪という「犯罪」による処罰を求めて告訴したが、検察は不起訴、検察審査会の起訴議決で「強制起訴」されたものの、一審は全員無罪の判決が出ている。

そうした中、原発事故被害者の東電の株主48人が、旧経営陣5人に対し、津波対策を怠り、原発事故が起きたために廃炉作業や避難者への賠償などで会社が多額の損害を被ったとして、東電旧経営陣に対して提起した「株主代表訴訟」に対する一審判決が、2022年7月13日に言い渡された。

東京地裁は、巨大津波を予見できたのに対策(原発建屋などの水密化、内部に水が流入しない対策)を先送りして事故を招いたと認定。取締役としての注意義務を怠ったとして、勝俣恒久元会長と清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、それに武藤栄元副社長の4人に対し、連帯して13兆3210億円を支払うよう命じた。

通常、個人より高額になるはずの会社への賠償額を含めても、世界最高額になると思われるような莫大な金額だ(これまで裁判上の手続きにおいて一度に確定した賠償の最高額は、英石油大手BPが2010年4月にメキシコ湾で起こした大規模原油流出事故の、BPと沿岸政府・自治体との訴訟和解賠償金としての総額が208億ドル[約2兆5000億円]と推測されている)。

この判決のわずか一か月前の6月17日に、同じ東京電力福島第一原発事故をめぐって、最高裁判所が、原発被災者に対する国の賠償責任を否定した判決を出していた。

それもあって、この「13兆円賠償命令判決」に対して、

「現実離れした賠償額に驚く」(読売「社説」)

「またもや司法の大迷走だ」(産経「主張」)

など、異常な賠償額や、最高裁判決との矛盾などを理由に批判的な報道がある一方で、朝日は、社説「断罪された無責任経営」のなかで

「事実を踏まえた説得力のある指摘だ。最高裁の判断は早晩見直されなければならない。」

と指摘し、東京は、社説「甘い津波対策への叱責」のなかで

「後世に残る名判決」

と評価するなど、マスコミの評価はみごとに真っ二つに割れた。