2022年は米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げを契機に円安が進んだ。一時は1ドル200円まで円が下落するとの観測もあったが、ここにきて円安の進行にかげりがみられる。歴史的とまで言われた円安は終了し、2023年は円高に向かうのだろうか。
年初は1ドル110円台、10月に151円をマーク
まずは、2022年のドル円相場を簡単に振り返る。
2022年は年明けから3月ごろに至るまで、ドル円はおおむね1ドル115円前後を推移していた 。潮目が変わったのは3月に入ってからで、FRBが新型コロナウイルス禍で続けてきたゼロ金利政策を改め利上げに踏み切ると、円はたちまち下落を始めた。
4月の段階でドル円相場は1ドル130円台に突入し、一時は落ち着きを取り戻したかに見えたが、6月に入って再度、円は下落に転じ、9月についに1ドル140円台に突入した。ドル円相場が1ドル140円台に入るのは1998年以来24年ぶりで 、円の価値がこの水準まで下落すると、財務省は円安を是正するために円買い介入を実施した。
それでもなお、円安の進行は勢いを維持し、10月21日に2022年で最安値の1ドル151円台をマークした。年初のドル円相場が1ドル115円前後だったことを踏まえると、円の価値は30%以上下落した。
日米の金利差拡大で円安が進行
円安はなぜ、ここまで進んだのか。直接の引き金となったのはFRBの利上げだが、FRBの利上げはなぜ、円安を誘導するのか。
アメリカの金利引き上げによって何が生じたかというと、それは日米の金利差の拡大だ。アメリカが金利を引き上げたのは2022年に入ってインフレが加速したからで、同年6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比9.1%の伸び率だった。
インフレを抑制するためにFRBがとった手段が金利の引き上げで、FRBは6月の連邦公開市場委員会(FOMC)から4会合連続で通常の3倍となる0.75%の利上げを決めた。
日銀はマイナス金利を維持
アメリカが歴史的なインフレに見舞われる中、日本でもインフレは進行したが、その水準はアメリカほどではない。日本の10月のCPIはおよそ40年ぶりの高水準などと報じられたが、それでも3.6%に過ぎない。
日本銀行はデフレからの脱却を目指して大規模な金融緩和策をとり続けてきた。ここでアメリカのように金利の引き上げに踏み切れば、日本経済に冷や水を浴びせることになり、デフレ脱却が頓挫しかねない。
だからこそ、FRBや欧州中央銀行(ECB)が利上げをする中でも、日銀はマイナス金利を据え置いてきた。こうして、日米の金利差は拡大したのだ。
アメリカのインフレはピークアウトか
日米の金利差が広がると、なぜ円安が進むのか。
同じお金を預けるにしても、金利が高いのと低いのとでは、金利が高い方が利益は大きい。FRBの利上げによって金利が高くなっている状況下では、円を売ってドルを買う動きが進むというわけだ。
それがここにきて、円安は終了し、これからは円高に向かうとの見方が強まっている。その理由の1つは、FRBが現在の利上げのペースを緩めるという観測が強まっているからだ。
実際、FRBは12月のFOMCで利上げ幅を0.75%から0.5%に縮める決定を下した 。利上げはインフレを抑制する効果がある一方で、景気を冷やすという負の作用も働く。急激な金利の引き上げによってアメリカの景気が後退することへの懸念は根強い。
また、アメリカの11月のCPIは前年同月比7.1%の上昇で、市場予想の7.3%を下回った。CPIの伸び率は5カ月連続で鈍化しており、インフレ圧力は強いもののピークアウトへの期待も高まっている。
ここにきて日銀が事実上の利上げ
このように、拡大した日米の金利差が縮まる可能性が生じていることが、2023年の円高観測の根拠になっている。
さらに、この円高観測を補強する材料が、日本側からも出てきた。
日銀は12月20日の金融政策決定会合で、金利政策の変動幅をプラスマイナス「0.25%」から「0.5%」に修正した 。市場はこれを事実上の利上げと受け止め、その日ドル円相場は1ドル137円台前半で推移していたのが1ドル132円台に急騰し、1日で5円程度動いた。
日銀の黒田東彦総裁は任期が2023年4月までで、再任はないとみられている。黒田氏の後任はまだ決まっていないが、黒田氏のもとで続けてきた異次元の金融緩和が修正されるのかが焦点となっている。
金融緩和が縮小されれば日本でも金利が上昇する可能性が高く、2023年は一転して円高が進むとの観測はより強まっている。
日米の金利差縮まる可能性 2023年円高観測の根拠
2022年に進行した歴史的な円安は日米の金利差拡大によってもたらされた。ところが、この日米の金利差は2023年に縮小する可能性が高まっており、こうした見方が2023年円高観測の根拠となっている。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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