AR使用のハードルに変化の兆し
しかし、ここにきて日常的にARを使用する際の2つのハードルに対して、変化の兆しが見えてきました。
カメラ画像を使用した自己位置推定サービスの登場
まず、1つ目の自己位置推定に関しては、LIFULLとパートナーシップを締結しているNiantic社が2022年上旬に「Lightship VPS」を発表し話題を呼びました。
このVPSとはVisual Positioning System(ビジュアル・ポジショニング・システム)の略で、GPSを使用しておおよその位置を推定し、カメラに写ったオブジェクトの色や形状から、今カメラがどこにいるのかを推定するシステムです。
その精度は0.01m級であることから、GPSだけでは実現できなかった街の特定の場所にピッタリ位置を合わせたコンテンツが提供可能になりました。
このVPSに関してはGoogle社からストリートビューの元となる大量のロードサイドの画像を活用した「ARCore Geospatial API」が発表され、こちらも大きな話題となりました。
ARグラスの再興と普及の未来
2つ目のデバイスの壁に関しても、変化が現れています。
2012年に発表され、2015年には一般販売が中止となったGoogle Glassは、活躍の場を商業・産業に移し2019年にはver2.0を発表、現在では数多くの企業に導入されています。
一方、コンシューマー向けに関してはNrealなど、比較的安価なモデルが出現し始めるなどイノベーター、アーリーアダプターに向けた商品が揃いつつあります。
LIFULLと提携しているNiantic社も2022年11月にQualcomm社と合同で屋外用ARヘッドセットのリファレンスデザインについての共通ビジョンを提示し、そのコンセプトムービーを公開しました。
Apple社も2025年にプロダクトを発表するのではないかと予測されるなど、ARグラスを取り巻く環境は明るいように思います。
このままARグラスが普及すれば、常にカメラで周りを認識しながら、現実世界に情報が重なって表示されるのが日常となります。
スマートフォンを毎回ポケットやバッグから取り出すといった手間がなくなり、すぐに情報へアクセスできるようになるので、日常におけるARの活躍の場が増えると考えられます。
一般的に普及するのはまだ少し先の未来かもしれませんが、スマートフォンがiPhone 3GSの登場から急激に普及し、今ではなくてはならないものになったように、1つのキラーデバイスが市場を一変させる可能性は大いにあるでしょう。
そのような「ありえるかもしれない未来」に対して、私たちは現時点でどのようなことができるのかを検討し、プロトタイプとなるアプリを開発し、パブリックテストを開始しました。