老後資金として退職金をあてにしている人は多い。しかし、条件を満たすことで退職金と同時に失業手当をもらえることは知っているだろうか?ここでは、退職金まわりのあまり知られていない裏ワザをいくつか紹介する。
退職金の現状
厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は80.5%。企業規模別では、「1,000人以上」92.3%、「従業員300~999人」91.8%、「従業員100~299人」84.9%、「従業員30~99人」77.6%となっている。大企業になるほど、退職金制度が完備されているといっていいだろう。
退職給付金制度がある企業のうち、「退職一時金制度(いわゆる年金)のみ」が73.3%、「退職年金制度のみ」が8.6%、「両制度併用」が18.1%となっている。退職年金制度とは、退職後に年金のように分割して定期的に受け取る制度のことだ。
退職金、みんなどれくらいもらっている?
大卒・大学院卒(管理・事務・技術職)では、定年退職による退職金は平均1,983万円。一方、高卒(管理・事務・技術職)では1,618万円となる。
勤続年数別にみると、大学・大学院卒では勤続20~24年で1,267万円、勤続25~29年で1,395万円、30~34年で1,794万円、35年以上で2,173万円となっている。
退職金の受け取り方――少しの工夫で大きくお得に
老後の資金は、それまでにためてきた貯蓄と退職金や退職年金、公的年金をあてにすることになる。定年退職後に同じ会社で継続雇用されたり、新たな職に再就職したりして給与所得を得る人もいるだろう。
いずれにせよ、老後資金は多すぎることはないため、退職金をよりお得に受け取る方法や、申請することで得られるお金の知識は知っておいて損はない。次に、そうした退職金まわりの“裏ワザ”を紹介する。
裏ワザ① プラス1日で退職所得控除額が70万円アップ
退職金は所得税および復興特別所得税や住民税の課税対象となる。ただし、退職金を一時金として一括で受け取る場合はほかの所得とは別に課税され、「退職所得控除」により税負担が軽くなる。
退職所得控除の控除額の計算式は次のとおり。退職金額からこの控除額をマイナスし、そこからさらに2分の1にした金額が課税対象となる。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
ここでポイントなのが、この計算における勤続年数は繰り上げでカウントとすることだ。つまり、勤続年数が30年と1日であれば繰り上げて31年とカウントされ、その1日の違いだけで控除額が70万円多くなる。なお、この控除額の計算はiDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金として受け取る場合にも適用される。
そこで、早期退職優遇制度などを利用する場合は、これを意識して退職日を決めるといいだろう。“勤続ちょうど○○年”での退職はキリがいいが、控除額を考えると1日でもいいからそこに足すことをおすすめする。
一方、定年退職では会社から退職日を決められてしまうが、柔軟な会社であれば交渉が可能かもしれない。
なお、退職金やiDeCoを一時金として受け取るか、年金として受け取るかの選択は、ケースバイケースではある。しかし、税額的には一時金として受け取るほうがお得なことが多い。特に定年後もある程度の収入が見込める場合には、一時金として一括で受け取ったほうがよい。
裏ワザ② まずiDeCoを受け取り5年以上空けてから退職金を受け取る
退職金とiDeCoの両方を一時金として一括で受け取る場合には、順番が重要だ。まず、退職と同時に両方受け取るのはNG。同時に受け取った場合、合算した金額に退職所得控除が適用されるため、控除額を超える課税対象額が大きくなる可能性がある。
では、どのように受け取るのがベストなのか?退職所得控除の仕組みでは、退職金に関して受け取りの前年から19年以内に受け取った一時金が合算対象となる。一方、iDeCoは受け取りの前年から4年以内に受け取った一時金が合算対象になる違いがある。
そこで、iDeCoを先に受け取り、そこから5年以上空けてから退職金を受け取れば両者は合算されず、それぞれに退職所得控除が適用されることになる。そのように別々に控除されることにより、収める税額がその分だけ安くなることだ。
裏ワザ③ 確定申告で節税できるケースがある
所定の手続きとして「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、通常は退職金の確定申告の必要はない。ただし、退職日が年の途中となり年末調整を受けていないケースでは、確定申告をすることで払い過ぎた税金が戻ってくることがある。
例えば、退職後の任意継続保険料、国民健康保険料・介護保険料は、確定申告で社会保険料控除の適用を受けられる。生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、セルフメディケーション税制の適用を受けられるケースもある。その場合は確定申告を行うことで、還付金(戻ってくる税金)を受け取れる。
裏ワザ④ 退職金と雇用保険の手当は2重にもらえる
定年退職による離職であっても、ハローワークで求職の申し込みを行い、かつ失業の状態にある場合は雇用保険の基本手当を受給できる。たとえ退職金をもらっていても再度就職する意思があるなら、雇用保険の手当をもらえるのだ。
給付期間は通常、雇用保険の被保険者であった期間が10年未満で90日、10年以上20年未満の場合で120日、20年以上で150日。基本手当の1日当たりの額(基本手当日額)は、離職日直前の6ヵ月にあたる賃金日額(賞与などは含まない)の50~80%(60~64歳は45~80%)となる。ただし、これには上限額がある。
なお、基本手当の受給を受けることが可能な期間(給付期間ではない)は原則的に1年間となる。ただし、60歳以上の定年などによる退職者の場合、離職日の翌日から2ヵ月以内に就職を希望しない期間(最長1年)を申し出ることで、その期間分だけ受給可能期間を延長できる。
そこで、例えば定年退職後にゆったり休息して旅行や趣味などを十分楽しんでから、求職を始めた時点で雇用保険の手当を受給し始めることが可能だ。
文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
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