ラポールの原理原則とは

それでは、ここから本能的な信頼関係を構築するために必要なラポールの原理原則を3つご紹介します。

「人はどんな人のことを本能的に好きになるのか」「どんな人を信頼しやすいか」という点で、人が人である以上、応用できる考え方があります。ぜひ、これを職場内やチーム内で実践していただくことをおすすめします。

①人は自分のことを理解しようとする人を信頼する

多くの人は、自分のことを全く尊重も理解もしようとしてくれない人から何かしらのアドバイスをされても、動こうとはしません。

しかし、例えば「存在承認」をしてくれる人から同じアドバイスを受けた場合、反応は大きく変わるものです。

このように、人は「何を言われるか」よりも「誰から言われるか」に非常に大きく影響されます。ここで大事な点が「理解しよう」という点です。

多くの人が誤解されやすいのですが、理解とは肯定することではありません。当然、否定することでもありません。

理解とは、聴き手側の「判断」「評価」「解釈」がないという状態です。

例えば、Aさんが私に対して何かを話しているシチュエーションがあるとしましょう。その際に、「Aさんは私に何を伝えようとしているのか」と、私自身がAさんの心の中をあるがままに知ろうとする姿勢が「理解」を示すことになります。

ここで大切なのが、その人のことを理解できているかどうかよりも、理解「しよう」という姿勢です。「私はあなたのことを完全に理解した」と言われても、人は疑問に感じるものです。

ビジネスの現場で奔走している管理職やリーダーから「残念ながら、仕事が忙しくて、部下の話を聴く時間がありません」というご相談もよくいただきます。

しかし、大事なのはこれは「時間」の問題ではなく、「姿勢」の問題なのです。

ビジネスをしていると、話を聴いてもらえるという体験は意外と少ないものです。傾聴のための1時間もとる必要はありません。たった10分で構わないので、理解しようとする姿勢で対話することが重要です。

②人は自分の大切にしてくれるものを大切(尊重)にしてくれる人を信頼する

子どもの頃からよく言われる言葉に「誰かにされて自分がいやだなと思うことは、人にはしてはいけない」というものがあります。

これは逆もしかりで、自分の価値基準で「いいな」と思ったことは相手も同じ価値基準で喜ぶとは限らないのです。それを知らないまま相手に善意を施しても、それは「独りよがりの善意」になってしまいます。

大事にしている人の顔を1人思い浮かべてみてください。その人をどのように大事にしてますか。

これらの質問を受けて「相手の価値基準を無視して、自分の価値基準のみで“大事にしていた”」と気づく人も多いのではないでしょうか。

納得感の欠如や方向性に対する食い違いが生まれてしまうのは、お互いが大切にしている考え、価値観、ポリシーを理解することに時間を使っていないことが大きな原因です。

例えば、管理職やリーダーの場合、どのくらい部下のことを知っているのでしょうか。

下記が部下に対する理解レベルになります。

【レベル1】

・部下のフルネームを漢字で書くことができる
・出身地を知っている
・前職在籍していた企業を知っている
・趣味や好きな食べ物などを知っている

【レベル2】

・子ども時代のエピソードを知っている
・当社に入社した理由や動機を知っている
・仕事以外の経験やエピソードを知っている
・尊敬する人を知っている
・何によってモチベーションが上下するかを知っている
・仕事において何を大事にしているかを知っている

【レベル3】

・人生において成し遂げたいことを知っている
・人生においてどんな生き方をしたいかを知っている
・人生において何を大事にしていて、どんなポリシーがあるかを知っている
・本人のコンプレックスを知っている

管理職やリーダーができる限り、部下の仕事上の考え方だけでなく、人生レベルにおいて大切にしていることを理解しようと努め、尊重することで、コミュニケーションにおける食い違いを防げるでしょう。

③人は共通部分を認識し、感じとることで信頼度を高める

人は共通部分を頭で認識したり、感じとったりすることで安心感が湧くものです。例えば、同じ出身地だったり、同じ学校出身だったり、趣味が同じだったりするなど、共通部分が多いほど信頼関係を高めることができます。

しかし、無理に共通部分(共感部分)を見つけようとすると、無意識コミュニケーションで無理していることが相手に伝わってしまいます。

そのため、3つの原理原則を段階的に押さえていくことが大切です。まずは「理解」しようとし、その上で「尊重」し、自分も「共感」できるところから共感するというステップを心がけましょう。