コロナ禍では外食産業全般がダメージを受けたが、それはファミリーレストランも例外ではない。そんなファミレス大量閉店時代にあって、各社はリブランドを含む生き残り策を図っている。ファミレス閉店の現在と今後の予想についてここで紹介しよう。
「ガスト」「ジョナサン」の閉店が増えている
ファミリーレストラン(以下、ファミレス)最大手のすかいらーくホールディングスが発表した2022年12月期の中間決算によると、コロナ禍の長期化により売上が減少している、または回復が遅れている店舗を中心に約100店舗が閉店の見通しとなったという。
ただし、グループ全体としての売り上げは決して落ちておらず、売上総利益については、前年同期約878億円から今期(2022年12月期第2四半期連結)約966億円と、約88億円の増額となっている。
いずれにせよ、すかいらーくホールディングスは同業他社を大きく引き離し、業界トップとして不動の座を築いている。第2位のサイゼリヤと第3位のロイヤルホールディングスとともに1年間の売上高を比較した表を次に紹介する。
売上高 | 前年比 | 備考 | |
---|---|---|---|
すかいらーくホールディングス | 約2,646億円 | -8.3% | 2021年度12月期通期 |
サイゼリヤ | 約1,443億円 | +14% | 2022年度8月期通期 |
ロイヤルホールディングス | 約840億円 | -0.4% | 2021年度12月期通期 |
圧倒的な売上高を誇るすかいらーくホールディングスの特徴がマルチブランド戦略だ。リーズナブルな価格の「ガスト」、中華特化の「バーミヤン」、スタンダードなファミレスの「ジョナサン」、和食特化の「夢庵」、ステーキ店の「ステーキガスト」など多くの業態・ブランドの展開が持ち味といっていいだろう。
その中でも比較的不振なのがガストやジョナサンだ。2021年度通期の決算説明資料によると、同年1年間でガストが14店舗、ジョナサンが9店舗閉店している。しかも、ジョナサンはガストに比べると母数となる既存店舗数が少ないため、約4%もの店舗が1年間に閉店したことになる。また、新規出店もゼロとなっておりジョナサンは減る一方だ。
ガストとジョナサンに共通するのは和洋中がそろったスタンダードなファミレスらしいメニュー構成になっているという点。ここからは、こうしたタイプのファミレスへのニーズが低下していることがうかがえる。
コロナ禍で1,000店舗超が減少
さて、すかいらーくホールディングスだけでなく、ファミレス業界は全体として閉店が相次いでいる。帝国データバンクの調査によると、コロナ禍前の2019年12月に9,230店舗あったファミレスは2022年6月時点で8,420店舗にまで減っている。実に約9%もの減少だ。
さらに、同調査では2023年3月末に8,000店舗まで減ると予想している。その場合、コロナ禍前からすると1,000店舗超が閉店することになる。
コロナ禍による店舗減少率が最も大きいのは九州を中心に展開するジョイフルで、直営店の3割に相当する200店舗以上が閉店している。
一方、好調なのがサイゼリヤで、前出の売上高の表を見ても分かるように2022年8月期通期では前年比14%の売上増となっている。
サイゼリヤが好調な理由は、イタリアン専門であることと値上げをほとんどしていないことが大きい。ミラノ風ドリア300円(税込)、グラスワイン100円(税込)といった激安メニューの印象から、安くイタリアンを食べたいならサイゼリヤというイメージを消費者に定着させていると考えていいだろう。
また、サイゼリヤのメニューはネットでしばしば話題になってきた。2019年12月に発売開始された「アロスティチーニ(ラムの串焼き)」は、ネットで話題になったこともあって品切れが続出。その後、復活しているが2022年11月は再び品切れとなっている。こうした大ヒット商品の存在は同店の大きな強みといえる。
リブランドで生き残りを図る
前出の帝国データバンクの調査では、ファミレス各社の生存戦略としてリブランド(ブランド転換)の動きが広がっていることを伝えている。
すかいらーくホールディングスもそうしたリブランドへ積極的に取り組んでおり、2021年中には73店舗をリブランド。転換例として、中華特化のバーミヤンへの転換18店舗、コメダ珈琲店に競合するむさしの森珈琲への転換10店舗、ハワイ料理特化のラ・オハナへの転換9店舗を挙げている。これらの例ではいずれも転換後の売上増が顕著だ。
閉店やリブランドにより、今後も和洋中が揃ったファミレスはさらに減っていくものと思われる。一方で、特定分野に特化した新たなファミレスブランドが登場してくる可能性もある。
文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
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