数々の「○○離れ」の中でも、急速に進行しつつあるのが新聞離れだ。特に若い世代では、新聞をほとんど読んでいない人も珍しくはない。彼らはどうして新聞を読まなくなってしまったのか?その主な理由は“あるもの”のムダにあった。

急速に進む新聞離れ

日本新聞協会の調査によると、一般紙(スポーツ紙以外)の発行部数は2000年に約4,740万部だったものが、2021年には約3,066万部となっている。約36%減の大幅な減少だ。

これを1世帯あたりで計算すると、2000年に1世帯あたり1.13部だったものが、2021年には 0.57部まで落ち込んだことになる。

新聞通信調査会の「第14回 メディアに関する全国世論調査(2021年)」によると、月ぎめで新聞を購読している人は61.4%となっており、年代別の内訳は次のようになっている。

70代以上 84.0%
60代 71.6%
50代 61.3%
40代 46.2%
30代 32.4%
20代 43.0%
18~19歳 54.0%
出典:新聞通信調査会 「第14回メディアに関する全国世論調査(2021年)」

18~19歳と20代の購読者数が30代よりも多いのは、親と同居している割合が他の年代より高いためだろう。よって、若い年代ほど新聞を読まないと考えられる。自分の周囲を見渡してもそういう実感を持つ人が多いはずだ。

同調査では月ぎめで新聞を購読していない人にその理由を聞いている。その答えで最も多いのは「テレビやインターネットなど他の情報で十分だから」(78.5%)だった。次いで、「新聞の購読料は高いから」(36.5%)、「新聞を読む習慣がないから」(26.6%)、「紙の新聞は、処分が面倒だから」(24.3%)、「新聞を読む時間がないから」(24.0%)という順になっている。

各メディアの“時間の奪い合い”

新聞を読むか否かは限られた時間をどう配分して使うかという話でもある。先に紹介した月ぎめで新聞を購読していない人に聞いた理由でいうと、「テレビやインターネットなど他の情報で十分だから」と答えた人は、新聞よりもテレビやネットに時間を割くということだ。

「紙の新聞は、処分が面倒だから」という理由も、その手間と時間が惜しいということであり、1日の時間を何に使うかという選択の問題といっていいだろう。つまり、新聞を読むことを時間のムダと考える人が増えてきたと考えられる。

NHK放送文化研究所「国民生活時間調査2020」によると、各メディアにおける利用時間(平日)の割合の平均は次のようになっている。これを見て分かるように各メディアによる“時間の奪い合い”で、新聞は完全に負けてしまっている。

テレビ 3時間1分
インターネット 1時間8分(うち動画視聴24分)
録画番組・DVD 24分
ラジオ 16分
新聞 14分
雑誌・マンガ 11分
音楽 10分
出典:NHK放送文化研究所世論調査部「国民生活時間調査2020~生活の変化×メディア利用」

各メディアの利用時間の合計は、5時間24分だ。これは全年代を含む平均であるため、時間に余裕のある高齢者世代がメディア利用時間の合計を引き上げる結果となっている。

年代別のデータを見ると、若い世代は高齢者ほど多くの時間をメディア利用に割いていない。例えば、16~19歳は4時間6分、20代でも5時間7分の利用時間となっている。そして、傾向としては若い世代ほどネット利用が増え、新聞の利用は減る形となっている。

Z世代が重視する「タイパ」

おそらく、若い世代の多くは朝食を取りながらテレビを見て、通学・通勤中に電車の中などでネットを閲覧。車移動ならラジオ。そして、帰宅後にテレビや雑誌、さらにネットなどを見るライフスタイルだろう。そうした中で、読むのに時間のかかる新聞が敬遠されるのは当然のことだ。

このように現在は多種多様なメディアがあふれているため、新聞にじっくり目を通すような時間をなかなか確保できない。新聞を読みたければ、新聞社のサイトで関心のあるニュースだけをさっと目を通せる。ニュースアプリ経由なら過去の閲覧履歴から、こちらが興味を持ちそうな記事を選んで優先的に表示してくれるので大幅な時短となる。

20代半ばまでのいわゆるZ世代では最近、コスパに似せた「タイパ」という言葉も聞かれるようになった。これは「タイム・パフォーマンス」の略で、かけた時間に対するリターンを意味する。そうしたタイパを重視する人の中には、映画を倍速で視聴する人も少なくない。

若い世代にとって時間はそれくらい貴重なものとして認識されているため、読むのに時間がかかる新聞はどうしても避けられてしまう。新聞はスマホよりもスペースを取ってしまうため、電車移動などの時間を利用して読むことにも不向きだ。

新聞離れのもう1つの理由

前出の新聞通信調査会の調査を見ると、新聞離れのもう1つの理由も見えてくる。

同調査で、各メディアの情報をどの程度信頼しているかを「100点」を最高値にして聞いたところ、最も信頼されているのが「NHK テレビ」で平均が69.0点、次いで「新聞」で67.7点という結果だった。

そして、新聞の信頼感が「低くなった」と答えた人に理由を聞いたところ、「特定の勢力に偏った報道をしているから」(42.8%)という答えが最も多かった。この調査では回答者の年齢層には触れていないが、おそらくネットに慣れ親しんでさまざまな意見に触れることの多い若い世代ほど、新聞が偏った報道をしていると感じるのではないだろうか。

こうした傾向にどう対処していくかによって、今後の新聞の行く末が決まってくる。このままでは、新聞の発行部数は縮小化の一途をたどるしかない。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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