今年はコロナ禍に加えて物価も上昇したことから、倒産した企業の顔ぶれにもその影響が見て取れる。今年倒産した企業の中から、負債総額トップ10をピックアップして、更にその企業を倒産の要因ごとに分類してみた。ちなみに、今年の倒産件数は9月末時点で6,201件となり、昨年(令和3年)の6,030件を既に越えている。(東京商工リサーチ調べ)

コロナ禍でサプライチェーン(供給網)が機能せず、半導体などの電子部品が不足し、自動車業界や電機業界などの日本の基幹産業も大きな打撃を受けた。

1.マレリHD(旧カルソニックカンセイ)(負債総額約1兆1,330億円)

日産自動車系の部品会社であったが、2017年に外資系ファンドの傘下に入る。納品先の日産自動車の低迷とコロナ禍が重なり、今年6月に民事再生法の適用を申請。負債総額の1兆円超えは今年最大規模で、新型コロナに関連した経営破綻の中でも最高額である。

2.ディー・エー・ピー・テクノロジー(負債総額約130億円)

大日本印刷と旭硝子(現AGC)の合弁会社で薄型TVに使われるプラズマディスプレイパネル用背面板を生産していた。供給先である大手家電メーカーの事業縮小に市況悪化が加わり、今年7月に特別清算開始命令を受けた。

自前の発電所を持たない新電力事業者は、電力大手や卸電力市場から電力を調達して契約者に提供してきた。しかしロシアのウクライナ侵攻がエネルギー価格の高騰を招き、新電力事業者の多くが販売価格より仕入れ価格が高くなる「逆ざや」の状態に陥ってしまった。

3.ホープエナジー(負債総額300億円)

上場企業のホープよりエネルギー事業を引き継いだ新電力事業者である。日本卸電力取引所(JEPX)から電力を調達して契約先に供給してきたが、調達コストの高騰で契約者への電力供給ができなくなった。今年3月、親会社ホープの取締役会で破産申し立てを決議した。

4.シナジアパワー(負債総額約130億円)

2016年に東北電力と東京ガスがスポンサーとなり発足させた新電力事業者である。ホープエナジー同様、新電力市場の事業環境の悪化により債務超過に陥る。12月1日、東京地裁より破産開始決定を受けた。

今年は、ウクライナからの穀物(小麦やジャガイモなど)の輸出が滞っている。その結果、世界的にも家畜の餌や肥料が急騰し、畜産農家の苦悩は今も続いている。

5.神明畜産ほか2社(負債総額約574億円)

神明畜産、肉の神明、共栄畜産の3社は国内大手の豚・牛畜産グループである。畜産から加工、販売までを一手に担っていたが、豚熱の発生と飼料の高騰により資金繰りに行き詰まる。今年9月民事再生法の適用を申請した。

6.富士たまご他7社(負債額調査中)+イセ食品グループ(負債総額約449億円)

富士たまごは、イセ食品を中心とするグループ企業の1社である。外食産業の不振や飼料価格の高騰で収益が圧迫されていたイセ食品が、今年3月に債権者から会社更生法の手続きを申し立てられた。富士たまごを含む関連7社も一体改革の道を選び、今年11月に会社更生法などを申請する。今後は簡易再生手続きに移行する見込みである。

巣ごもり消費によるコロナ特需も発生したが、その後の舵取りに失敗して経営が行き詰まるケースも散見される。事業の多角化やフランチャイズ戦略、世界展開が裏目に出たケースも多い。

7.アリウム商事(旧カコイエレクトロ)(負債総額126億円)

家電量販店とのフランチャイズ契約を積極的に推し進めてきた。新型コロナウイルスの影響から家電の買換え特需が発生し、一時は収益も回復したが、過去の店舗負担や借入金が重荷となり経営に行き詰まる。今年6月東京地裁より特別清算開始決定を受けた。

8.SH東雲堂(負債総額約193億円)

地域最大手の書店チェーンとして、広島県、岡山県、山口県を中心に幅広く事業(レンタル事業やカフェ経営など)を展開していたが、2019年に不正会計が発覚したことで金融機関の支援を受けていた。事業再生ADRを経て(事業は新会社のフタバ図書に移管)、今年5月に広島地裁より特別清算開始決定を受けた。

9.アイテック(負債総額約132億円)

総合医業コンサルティング会社である。設立当初は医療インフラが未整備の国に対しても援助プロジェクトを展開していた。公的医療機関からの入金(コンサル料)が年間1回であったことに加え、海外の政情不安による病院建設の中断やドル建て決済の損失も重なり、今年10月に民事再生法の適用を申請した。

10.医療機器卸ジェミック(負債総額約100億円)

親会社であるアイテックの医療機器販売部門として、多岐にわたる医療機材を取り扱っていた。もともと利益率が低いところに、アイテックの民事再生法申請で連鎖倒産に追い込まれる。今年11月東京地裁に破産を申請した。医療機器卸の倒産としては過去最高の規模となる見込み。

インフレが進行しても低賃金が続く日本では、外国人労働者を確保することさえ難しくなってきた。つまり、これから注意すべきは慢性的な人材不足に陥っている業種とも言える。そして、その兆候も数字に表れてきた。

今回の倒産企業10選には入っていないが、2022年度上半期(4-9月)の産業別倒産件数(東京商工リサーチ調べ)を見てみると、全産業の平均値が+6.94%(前年同期比)に対して、建設業(+14.61%)と運輸業(+42.10%)の数字が特に眼を引く。来年あたり、これらの業種から大型倒産が起きても決して不思議ではないだろう。

文・MONEY TIMES編集部

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