2022年3月期決算の純利益は過去最高の2兆8,501億円だったトヨタ自動車 。日本を代表する企業で社長を務める豊田章男氏の報酬は、時給に換算するといくらになるのだろうか。
2021年度の報酬総額は6億8,500万円
トヨタの2022年3月期有価証券報告書によると、豊田氏の報酬総額は6億8,500万円だった。そのうち、業績に連動しない固定報酬は2億400万円、業績連動報酬としての株式報酬が4億8,100万円だった。
2021年3月期の有価証券報告書で示された豊田氏の報酬総額は4億4,200万円で、トヨタの好調な業績を反映し、報酬は約1.5倍増となった。
2021年のトヨタの世界販売台数は首位
ここで、トヨタの業績を簡単に振り返りたい。
まず、2021年1〜12月の世界販売台数(グループ会社のダイハツ工業、日野自動車を含む)は約1,050万台だった 。ドイツ・フォルクスワーゲンの同年の世界販売台数は888万台で、2年連続で首位を維持した。
2022年3月期有価証券報告書によると、本業のもうけを示す営業利益は2兆9,956億円で、新型コロナウイルス禍であることや、半導体が不足しているという状況の中で、増収増益を達成した。
営業利益増の貢献度を地域別でみると、日本は+2,747億円、北米地域は+1,698億円、欧州は+572億円、アジアは+2,208億円、その他地域が+1,659億円と、いずれの地域でも増益だった 。トヨタは為替変動の影響や営業面の努力が増益に寄与したと分析している。
豊田氏の時給は34万2,843円?
豊田氏の時給に関しては、豊田氏の年間労働時間がわからなければ計算できない。しかし、公表されている資料からは豊田氏の労働時間を把握できないため、利用可能な一般労働者の労働時間を用いて計算することとする。
日本経済団体連合会(経団連)は2019年に労働時間等実態調査を実施している。調査対象はパートタイム労働者を除く期間を定めずに雇用されている労働者で、経団連の会員企業などから回答を得た。
それによると、2018年の一般労働者の年間総実労働時間は1,998時間で、製造業(1,998時間)と非製造業(1,999時間)で大きな違いはみられなかった。
この経団連の調査が示す一般労働者の年間総実労働時間1,998時間を用いて豊田氏の報酬から時給を計算すると、(6億8,500万円)÷(1,998時間)=34万2,843円となる。
他の有名企業の社長は時給いくら?
他の有名企業の社長について、豊田氏と同じように時給を計算すると、いくらになるだろうか。
ファーストリの柳井氏は時給20万200円?
カジュアルファッションブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの会長兼社長、柳井正氏の場合は以下の通りだ。
ファーストリの2022年8月期(2021年9月1日~2022年8月31日)有価証券報告書によると、柳井氏の報酬総額は4億円だった 。ファーストリの通期の売上収益は2兆3,011億円で、営業利益は2,973億円と増収増益を達成した。
柳井氏の報酬4億円を一般労働者の年間総実労働時間1,998時間で割ると、(4億円)÷(1,998時間)=20万200円となった。
ソフトバンクグループ孫正義氏は時給1,018万3,684円?
ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏の場合はどうだろうか。
報道によると、孫氏の2021年度の報酬は1億円だった。もっとも、孫氏は配当収入で202億4,700万円を得ており、収入総額は203億4,700万円と報じられている。
役員報酬1億円を一般労働者の年間総実労働時間1,998時間で割ると、時給は5万50円と計算できるが、203億4,700万円を基準にすると、時給は1,018万3,684円に跳ね上がる。
一般労働者(正社員・正職員)の平均時給は1,976円
こうした大企業経営者の時給は一般的な労働者の時給と比べてどれほど高いのか。
令和2年版厚生労働白書は、正規、非正規といった雇用形態別の賃金推移を時給ベースで示している。それによると、一般労働者(正社員・正職員)の2019年の賃金は時給ベースで1,976円だった。
これと一般労働者の年間総実労働時間を使って試算した豊田氏の時給を比べると、豊田氏の時給は実に173.5倍だ。同様に、柳井氏の時給と孫氏の時給をそれぞれ比較すると、柳井氏は101.3倍、孫氏は5,153.7倍となった。
大企業経営者の時給は一般労働者の100倍超
豊田氏をはじめ、日本を代表する企業の経営者の実労働時間は定かではない。ここで示した経営者らの時給はあくまで一般的な労働者の労働時間を基に試算したものだ。
その上で、億単位の年収を稼ぐ経営者らの時給は一般労働者の100倍以上とやはり高額で、大企業を率いる責任の大きさの表れといえるだろう。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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