だいたい萩生田政調会長が言った通りに
安全保障環境の激化に対応して国家戦略も改定された今、防衛費増額は必須です。それに対して、防衛予算の増加に伴う、国家としての予算をどう賄うべきなのかについて、今回の自民党税制調査会の決定とは、「来年度に増税する」ことの決定ではなく、今後時間をかけて議論すべきテーマの叩き台です。
そのことは、実は税制調査会の宮沢会長の“上司”にあたる萩生田政調会長が12月6日の政調審議会で、「(防衛費増額財源の)全てを税で賄う、あるいは来年から増税が始まるかのような間違ったメッセージ」を発信すべきではないと指摘していました。
「ハンバーガーを頼むとフルコースを作る」“プロ”の人たち
また萩生田政調会長は6日、インターネット番組に出演し興味深い解説をしていました。少し長くなりますが、文字起こしを添えます(番組を視聴するともっと楽しめます)。
今年の目玉は防衛費なんですよ。向こう5年間で、43兆円を積もうと。日本の抑止力を高めるためには、自衛隊ってかわいそうなくらい脆弱。だって、雨漏りしている耐震補強が必要だっていっていつ倒れるかわからない官舎に、4割の人たちが住んでいるっていうね。ちょっと異常な事態なんで、今までは、日本は防衛費を使わないことが平和の象徴だったんだけど、こんなに周りに、まあ、ねえ、そういう人たちがいるとすれば、「もしもの時はうちだって怒りますよ」っていう姿勢を示さなきゃなんないから、やっぱり防衛費は大事なんですよ。
ところが、今これ毎日報道でやってるけど、来年は、増税なんかしませんよ。だって間に合う訳ないし。だけど将来のためには安定的な財源が必要だから、それは話はしなきゃいけないよねと。で当面は「国債でいい」って言ってるんですよ。もっと言えば来年は税収の上振れがあるから国債なんか発行しなくても大丈夫だと思っているんだけど。
問題は、税の議論もしなきゃいけないよねと。だけど議論しだしちゃうと、さっき言ったこの「プロの人たち」はですね、「ハンバーガー」でいいのに、「ハンバーグのフルコース」を作っちゃったりするんですよ。前菜からスープまで、頼んでないのにね。それがおっかない訳ですよね。
来年はやらないと。増税はしないと。だけど将来のために、どういう税を考えておくかってことを、決めなきゃなんないんだけど、割と税調の世界ってもう、「パクって入ってくるとですね、ワーってこう、みんなで調理しちゃう」ってところがあるんですよね。
昨日からずっと言ってるんだけど、税制の議論が始まると、「増税になるんじゃないか」って国民は思いますよね。だから「いつまで税は上げない」しそれもね、防衛費が膨らむからって全部を税でやるわけじゃないんですよ。色んな財政努力をして、その上でどうしても足りない部分が一定程度見えてきたときにこれをどうやって税に負担をするかってこういう話なんで、順序はこっち(財政努力)が先なんですよね。努力がね、政府としての。だから、そんな心配しなくていいんですけれど、どうしてもすぐに税の話になっちゃうと、「もしかして来年4月から、防衛費のために増税か?」なんていうとせっかく「防衛の構えを高めてくれないと困りますよね」と思っている国民も、何税だかわかんない増税の話だけ出てくると、「いや、そこまでするならこの位でいいかな」って思うじゃないですか。そこがちょっとおっかないんで、気を付けないと。
(以上、同番組より筆者文字起こし。)
まとめ与野党ともに政治家は様々に主張し、マスメディアは様々に曲解して断片的に伝えて“世論”らしきものを膨らまします。しかし彼らが基礎とする“事実認識”の中には、実相とかけ離れているものも散見されます。
整理すると、国民は「まずは防衛費予算の優先順位を上げる(≒他施策の優先順位を下げる)。そして日本という国家予算に不足分が見込まれるならば、国債(起債・償還延長/中止)、あるいは増税もやむなし」という現実的な考え方をしているとみていいのではないでしょうか。
今回の税制調査会の結論は増税の決定ではなく、政権与党の責任として国民に対して「議論の出発点を示してくれた」ということでしょう。これには国民の側も建設的な世論醸成に貢献することが大切でしょう。つまりこれは私たち国民自身の問題です。
あなたはどうしたいですか。