防衛費増額は自民党の選挙公約にあった

防衛費増額(GDP比2%以上を目途)自体は、選挙という“禊”もしっかり通過し民意を得ているとみなすのが自然です。自民党は7月の参院選の公約の中に、“国防力を抜本的に強化する”ことを掲げ、次のように明記しております。

NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指します。(自民党公式サイトより引用、太字は引用者)

選挙の結果、自民党は勝利を手にしたので、「対GDP比2%以上への国防費増額」自体は少なくとも民意を得たと考えて差し支えないでしょう。

その上で、今になって「いや、選挙の際に増税を説明していない」や「増税ならば改めて国民に信を問うべき」といった物言いをする議員やメディアが目立っておりますが、国民の人気取りや政争の具にするのは、おやめ頂きたい。

仮に本気で言っていたらその政治家やメディアは「ナイーブ」過ぎるでしょう。「今までGDP比約1%だった費用を2%にする、そのために必要な予算を確保する」と選挙前に聞けば、①他の支出を削る、②国債で調達する(償還延期・中止も含む)、③増税する、これらの選択肢の組合せを連想するのが自然でしょう。

筆者は「増税もあるだろうが、最大でも年間一人当たり5万円(≒6兆円÷1億2千万人)くらいか。国家運営の必要経費でしょう。」と単純計算して覚悟しておりました。

世論調査でも防衛費増額支持が過半数

また、防衛費に関する世論の動向は、NHKが定期的に実施している世論調査で時々質問されておりますので、その時系列を整理しました(グラフ1)。

具体的な質問の文言は微妙に変化しますが、防衛費の増加に対する肯定的あるいは否定的な回答という緩やかなくくりで民意の変化を確認すると、ロシアによる侵略の前は「増額反対」が「賛成」を上回っていましたが、侵略を境に逆転、「増額賛成」が「反対」を上回り過半数を維持しています。

※「肯定的(青)」「否定的(赤)」のカテゴライズはNHK世論調査の結果を元に、筆者が集計しグラフ化したため筆者の主観が入っております。正確な世論調査の結果については必ずNHKの原典データをご確認ください。

NHK世論調査 内閣支持率 | NHK選挙WEB y202212.pdf (nhk.or.jp)

以前検証した通り、NHKの世論調査には、「高齢層偏重」という傾向があり、高齢層ほど慎重な姿勢が強まりますが、それでも増額に肯定的な回答者が過半数という結果を踏まえるならば、「国民意識の実相は、防衛費増額を是認している」と推定します。