相続税の節税手段として、生きているうちに財産を家族に贈与することで相続する財産を減らす生前贈与と いう方法がある。しかし、贈与の仕方次第では贈与税がかかるため、その場合は申告して納税しなければならない。

贈与税無申告はバレるのか?どうやってバレるのか?

家族間での贈与は、無申告のままでも即座にバレることはない。特に、いったん現金で引き出して贈与すれば、お金が誰に移動したかという記録は残らないことになる。

しかし、相続が発生した際や不動産登記の際に税務調査が入るケースが あり、銀行口座の履歴などに不自然な入出金が確認されれば、そこから贈与税無申告がバレることになる。

国税庁の資料「平成30事務年度における相続税の調査等の状況 」には、「あらゆる機会を通じて財産移転の把握に努めており、無申告事案を中心に、贈与税の調査を実施しています」とあることから、相続や不動産登記時以外にも贈与税無申告がバレる場面はありそうだ。

いずれにせよ、贈与税無申告に関しては、すぐにはバレなくてもそのうちバレてしまうと考えたほうがいいだろう。

贈与税無申告がバレたらどうなる?

贈与税の計算では、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与でもらった財産を合計し、そこから基礎控除額110万円を差し引いた金額に税率を乗じて税額を計算する。基礎控除後の金額が200万円以下の場合の税率は10%となり、金額が上がっていくとそれに伴い税率も最高55%(所定の控除額が適用される)まで上がっていく 。

この贈与税の申告を怠った場合、本来支払うべき贈与税に延滞税と加算税が加算される。つまり贈与税無申告がバレたら、より多くの税金を支払うことになるわけだ。

延滞税は、納期限から2ヵ月までは年利2.4%、それ以降は年利8.7%(いずれも2022年中の税率)が適用。延滞した期間分だけ、本来支払うべき贈与税に対する利息のような形で延滞税が かかる。

一方、加算税には、うっかり申告し忘れた場合にかかる「無申告加算税」、申告額が実際より少なかった場合にかかる「過少申告加算税」、故意に申告をしなかった場合にかかる「重加算税」などの種類があり、それぞれ税率が異なる。例えば 、故意の無申告では通常、本来支払うべき贈与税の40%にあたる加算税がかかること になる。

この延滞税と加算税は非常に大きなペナルティといえ、これほどのリスクをおかしてまで贈与税無申告を試みるのはまったくもって愚かな行為といっていいだろう。もし、すでに無申告での贈与をしてしまっていたら、いったん返却すれば贈与はなかったことになる 。

すでに、その一部、または全部を使ってしまっていた場合も、できる限り 早く自主的に申告することで延滞税や加算税を可能な限り少なくできる。

贈与税がかからないケースもある

贈与税無申告というリスクをおかさずとも、贈与税がかからないケースを利用すれば節税は可能だ。次に5つの贈与税節税法を紹介しよう 。

年間110万円の基礎控除を利用する

贈与税はその年の1月1日から12月31日までの間に贈与された合計額から110万円の基礎控除分を差し引いたものに対し課税されるので、110万円までなら基本的に非課税と なり申告の必要はない。

なお、2人以上からの贈与を受けた場合、それぞれの贈与分に基礎控除110万円が適用されるわけではない。あくまで贈与を受けた総合計に対して控除額110万円が適用される ことになる。

贈与税の配偶者贈与を利用する

婚姻期間が20年以上の夫婦間において、居住用不動産、またはそれを取得するための金銭が贈与された場合、2,000万円の配偶者控除が適用。基礎控除110万円と合わせて合計2,110万円までは贈与税が非課税となる。

住宅取得資金贈与を利用する

父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築、取得、増改築などの費用を贈与され、一定の要件を満たした場合、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円まで非課税と なる(金額などは2023年12月31日までの内容)。

教育資金の一括贈与を利用する

祖父母などから教育資金として孫がまとめて贈与を受ける場合、原則的に1人につき1,500万円までが非課税となる。ただし、この贈与には金融機関への信託を介する必要がある(金額などは2023年12月31日までの内容)。

結婚・子育ての一括贈与を利用する

子や孫の結婚・出産・子育てを支援するための贈与は、子・孫1人につき1,000万円までが非課税となる。ただし、結婚資金は最大300万円まで(金額などは2023年12月31日までの内容)。

以上に紹介した贈与税のかからないケースでは、基礎控除を別にすれば贈与した財産の利用目的が定められている。しかし、そうした贈与により家計に余裕ができることで子や孫は蓄財が容易となり、結果的には死後相続する場合と同じように子孫へ財産を残すことになるだろう。

なお、各贈与における非課税の適用は所定の条件を満たす必要があるため、できれば詳細を税理士などに相談したほうがよい。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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