パソコンのMacにiPhoneなど、次々とヒット商品を世に送り出し、時価総額が世界一を誇る米IT大手のアップル。アップルは1980年12月12日に米ナスダックに上場した。それから40年余り、上場日にアップル株を購入し保有し続けていたとしたら、アップル株1株の価値はどれほど上がっているのだろうか。
創業時の「Apple Ⅰ」は基板むき出しのコンピューター
アップルは1976年に創業した。創業者はスティーブ・ジョブズ氏とスティーブ・ウォズニアック氏の2人。両氏は同年にアップル初のコンピューター「Apple Ⅰ」を発売した。
Apple Ⅰは基板がむき出しの状態で発売され、商品としては見向きもされなかった。1977年に発売した「Apple Ⅱ」はApple Ⅰの反省を踏まえ、購入者がカスタマイズする必要のない完成品として売り出した。
Apple Ⅱはアップル初のヒット商品となり、1980年12月のIPO(新規の株式公開)へとつながった。
1株0.12ドルから今は1株150ドルに
アップルのIPO時の公開価格は1株22ドルだったが、アップルはこれまでに株式分割を複数回行っており、上場日からの成長率を計算するには株式分割の影響を調整する必要がある。
株式分割とは、1株をいくつかの株式に分割することだ。発行済み株式が増える一方、株価は通常下落する。企業側には、株価を下げることにより、より多くの人が株式を購入しやすくなるメリットがある。
この株式分割の影響を考慮する上で便利なのが、ヤフーが運営する投資の情報サイト「ヤフーファイナンス」だ。ヤフーファイナンスでは、現在の株価を基準としてこれまでの株式分割の影響を調整した過去のデータを確認できる。
ヤフーファイナンスで確認できるアップルの上場後すぐの株価は、0.12ドルとなっている。アップルの株価は2022年11月15日の終値が150.04ドルで、1980年12月15日の0.12ドルと比べると、実に約1,250倍だ。42年前にアップル株に100万円を投資していれば、単純計算で100万円は12億5,000万円に膨れ上がっていた。
希代の経営者スティーブ・ジョブズ氏
アップルの株価は、なぜここまで上昇したのか。
アップルの成長の軌跡を振り返る上で、スティーブ・ジョブズ氏の存在は欠かせない。ジョブズ氏はアップルの創業者であるにもかかわらず、一度社内の内部抗争によりアップルから放逐されている。
ジョブズ氏がアップルに復帰したのは1996年のことで、アップルは当時、倒産寸前の状況に追い込まれていた。復帰したジョブズ氏は次々と改革を実行する。
当時、アップルとマイクロソフトは敵対的な関係にあった。アップル不振の原因の1つが、マイクロソフトが発表したWindowsの普及にあったからだ。ジョブズ氏はここで「歴史的」とも評されるマイクロソフトとの和解にこぎ着け、マイクロソフトから1億5,000万ドルの出資を受けた。
ジョブズ氏は、アップルが展開していた製品ラインアップの整理にもとりかかる。当時のアップルは、プリンターやデジタルカメラなど15種類もの製品を扱っていた。ジョブズ氏はこの中からアップルが注力する製品を4種類に絞り込み、経営資源を集中させた。
ジョブズ氏復帰後、ヒット商品を連発
アップルの収支は、1996年が売上高98億ドル、最終赤字8億ドル、1997年が売上高70億ドル、最終赤字10億ドルだった。ジョブズ氏の復帰後、1998年には売上高が59億ドルまで減少するが、一方で0.3億ドルの黒字化にも成功した。
以降のアップルは、次々とヒット商品を世に送り出している。
1998年に発表したパソコン「iMac」は、豊富なカラーバリエーションが話題を呼んでブームとなり、2001年の音楽管理ソフト「iTunes」とデジタルオーディオプレーヤー「iPod」の成功でアップルは再びIT企業の雄としての地位を得た。
その後のiPhoneやiPadといったアップルのヒット商品については、多くの説明を必要としないだろう。ジョブズ氏は2011年10月5日、56歳の若さで死去した。
ジョブズ氏の後継としてCEO(最高経営責任者)に就任したティム・クック氏はアップルをさらに成長させ、時価総額が世界一の巨大IT企業に押し上げた。アップルは現在、「プロジェクト・タイタン」と呼ばれる完全自動運転の電気自動車(EV)開発を進めており、Apple Carの誕生が期待されている。
成功するとリターンが大きいIPO投資
今や世界一の時価総額を誇るアップルも、当初はたった2人のエンジニアが立ち上げたにすぎない小さな会社だった。上場日のアップル株1株の価値は1,250倍に膨れ上がっており、IPO投資が成功した場合のスケールの大きさを物語っている。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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