政府の見解

現時点での政府の公式見解は、11月30日に開催された第108回アドバイザリーボードの資料1「直近の感染状況の評価等(P5)」にあります。

【重症度等】オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低いことが示されているが、現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率(致死率)は、季節性インフルエンザの致命率(致死率)よりも高いと考えられる。

つまり、「現時点で分析されたオミクロン株による感染の致死率は、季節性インフルエンザの致死率よりも高い」と考えられるのだから、新型コロナは特措法の条件を満たしているということです。

この11月30日の資料3-7には、根拠となる大阪府の詳細なデータが公開されていますが、なぜか70歳以上の数値しか示されていません(P19)。そこで、P20~P21のデータから、死亡者が特に多い第5波以後の60歳以上のみを抽出し、季節性インフルエンザの危険度と比較してみたのが下のグラフです。

なるほど、オミクロン株による感染の致死率は0.67%~0.75%となり、季節性インフルエンザの0.55%よりまだ高いようです。

データはアドバイザリーボード資料より

60歳以上の死亡者は“軽症”が大部分なのか

しかし、このグラフを見ると奇妙なことに気付きます。第6波から主流になったオミクロン株では、重症化率より致死率がずっと高い「逆転現象」が起きているのです。このことは、60歳以上の死亡者には、“軽症”だったはず人が重症の人より何倍も多いことを意味します。

少々奇妙に思えるこの現象は、第6波から主流になったオミクロン株だけで見られ、第5波以前と季節性インフルエンザでは見られません。どう考えればいいのでしょうか?

ここで、一時は相当な話題になった『「コロナ肺炎」単独の死因はゼロ 愛知県内、第7波で』という中日新聞の記事を思い出す人もいるかもしれません。同記事によると、

新型コロナウイルス感染の流行「第7波」で[8月]15日までに公表された愛知県内の「コロナ死者」について、死因で第4波や第5波などでは顕著だった「コロナ肺炎」単独のケースは確認されていないことが、県への取材で分かった。

とあります。

読売新聞も『第6波の「コロナ死者」、3割の死因がコロナ以外…高齢者の持病悪化や老衰目立つ』と伝えています。同記事によると、第6波では、3割から5割がコロナ以外の疾患で死亡しているそうです。

確かに、こう考えれば「重症化率より致死率の方がずっと高い」ことが説明できます。また、前出の「第7波では約3割の人がコロナ以外で亡くなっている」(財政制度分科会資料)こととも整合的です。しかし、まだ情報が乏しいので、事実と断定するのには時期尚早でしょう。