不動産開発への融資は焦げ付く可能性大

その兆候は、10月24日に「中国政府の指示によって今年第1~第3四半期(1~9月)の不動産開発事業への銀行融資は2兆6400億元(日本円にして約50兆円)に達した」という報道にも現れています。

中国全土で空き家の戸数は3000万戸に接近していると見られ、今後中国の住宅新築需要は徐々に縮小する確率が高いと言われています。

とくに要注意なのは、中国における住宅への「投資」需要です。世界中どこでも、住宅への投資需要はほとんど賃貸住宅を所有して家賃を稼ぐことが目的です。

ところが、中国では「住宅投資」とは1世帯で2~3戸の住宅を買って、評価益が急拡大した住戸を売って、実現した利益を手元に残す住宅のローンの繰り上げ返済に使うことなのです。

当然のことながら、かなり急速に評価益が膨らむような住宅市況でないと、2~3戸分の住宅ローンを並行して払っていくのは、大きな負担になります。ましてや、最近のように購入した新築住宅の価格が下がったりすると、もろに損失が出ます。

つまり、中国の住宅「投資」は、徐々に縮小していくのではなく、突然ゼロとかマイナス(2~3戸分の住宅ローンを払っていた世帯による実際に居住している住宅以外の投げ売り)となる可能性が非常に高いのです。

中長期的に見た場合、中国における住宅投資はますます展望が暗くなる要因が目白押しです。

まず、人口動態的に日本よりはるかに急速な高齢化による生産力人口の激減に見舞われます。次の2段組グラフの上段が示すとおりです。

2010年には生産力人口10億人を目前にしていたのに、2035年には8億人台半ばに縮小し、その後はこのグラフで言う低位推計に沿った急落が続くでしょう。

下段でおわかりいただけるように、中国政府による「ひとりっ子政策」の廃止は、期待していた出生数の増加どころか、やや回復に転じていた出生数をふたたび減少に転じさせてしまったのです。

「ひとりっ子政策」を廃止して出生数を増加させようという中国政府の意図には、あまり邪悪な陰謀は隠されていなかったと思います。

ですが、これまで何度も政府方針が転換するたびに痛い目に遭わされてきた中国の民衆は、政府の意向とは反対に動いたほうが安全だと考えたのでしょう。

この環境で不動産開発資金融資を拡大するのは、ほぼ確実に将来不良資産となる物件を乱造することにつながると思います。