高金利でも資金が逃げていく中国金融市場
2022年はまだ終わったわけではありませんが、世界中の国債保有者たちにとって1920年という1世紀以上も前の年に次ぐ、巨額損失の出た年になりそうです。
これまで世界中の発行済み残高で加重平均した国債利回りが前年比で30%近い下落に見舞われたのは第一次世界大戦直後の金融恐慌が勃発した1920年だけだったのですが、どうやら今年はその年に迫る大幅な利回り低下がありそうです。
もう12月に入っていて、国債利回りが急上昇する気配はないので、30%近い利回り激減はほぼ確定でしょう。債券市場がそうしたきびしい環境となっている中で、中国経済の危うさは、先進諸国の共通認識となっています。
先進諸国の国債金利が軒並み10~30年の長期債でも1~2%台に止まっている中で、中国の15年債はほぼ正確に3.0%、30年債なら3.3%の利回りが稼げます。それでも、中国の金融市場からは資金がどんどん逃げているのです。
このグラフには、ちょっとややこしいところがあります。
それは国民の海外預金とか外貨準備では中国に入って来る資金がプラス、出ていく資金がマイナスで表示されているのに、貿易収支にからんだ資金は逆に入って来る資金がマイナス、出ていく資金がプラスに目盛ってあることです。
なぜこういう表記法を使うかというと、貿易黒字が出れば当然その分だけ中国に流入する資金が増えるはずなのに、そこで増えていなければどこかで流出している資金があるはずだという意味が込められているのです。
そして、2020年の第1次コロナショック以降の特徴として、貿易黒字額は大きいので当然資金流入額も大きくなるはずが、実際には中国のGDP成長率が減速するにつれて資金流出額が大きくなっているという現象があります。
貿易黒字にも徐々に縮小する兆候が……もしこの状態で、中国経済の貿易黒字が縮小すれば、すでに始まっている中国からの資本逃避は、国民経済の基盤を揺るがす大問題となります。そして、その兆候はすでに表れています。
中国が世界貿易に占めるシェアは20世紀末からほぼ一貫して増加してきていたのですが、2015年以降は横ばいに転じています。
一方、主要な貿易相手国との貿易額で加重平均した人民元の実行実質為替レートは、2002~05年にやや低下した以外は、同じように2015年まで上昇基調を続けた後、横ばいです。
これを世界貿易に占めるシェアが伸びなくなったことへの対応策として元安政策を実施したけれどもあまり効果がなかったと見るべきではないでしょう。
実際に順調に国民経済が拡大している国の通貨が、経済全体の成長につれて強くなるのは当然の成り行きで、通貨を人為的に弱くして言わば安売りで世界貿易に占めるシェアを高めようとすること自体が、間違った政策なのです。
自国通貨を弱くして輸出を拡大しても、国民全体が他国から買えるモノやサービスの量は通貨が弱くなった分だけ確実に減少するのです。
そして中国経済の場合、世界貿易に占めるシェアが15%というのが目いっぱいの実力で、これ以上拡大しようとしても無理であり、元安で貿易量の中身は中国から送り出すものやサービスの量が増え、受け取るモノやサービスの量が減るだけのことなのです。
この事実を象徴しているのが、顧客層が国内に限定された中国電力株指数と、世界に打って出た中国のハイテク2銘柄、アリババとテンセントの株価推移でしょう。