目次
福知山に移住した人3. 安岡恵美里さん(イラストレーター)
福知山に移住した人4. 森さん(農業・廃校活用)
福知山に移住した人3. 安岡恵美里さん(イラストレーター)
イラストレーターであり、福知山市産業支援センタードッコイセ!Biz 相談員でもあるのが安岡恵美里さんです。

安岡さんは福知山市の「移住お試し住宅」に住んでみた後、実際に移住を決めた人です。その経験を活かして、福知山市への移住や起業を考えている人の相談にのっています。
安岡さんが移住をするきっかけとなったのが、お友達夫婦の存在です。神奈川県から福知山市に移住してきたお友達夫婦にすすめられたのです。
ちょうど人生の次のステップを考えている時だったこともあり、福知山市への体験移住を決めました。いきなり本格的な移住ではなく、お試し体験だったこと、またお友達が移住経験者だったこともあって、それほど深刻に考えることなく移住体験に踏み切れたそうです。
福知山に来てからもお友達のパン屋を手伝ったりしていましたが、環境の良さとストレスの少なさからイラスト描きに集中できるようになったそうです。
イラストレーターは、オンラインコミュニケーションやDXの進化により全国どこに住んでいても仕事ができるというのが良い点です。
私「福知山に実際住んでみた感想は?」
安岡さん「友だちに誘われて、面白そうという軽い気持ちで移住体験を始めましたが、最初は定住する気持ちはなかったんです。お試しで1年間住んでみて周りの人たちにすごく助けられたんです。人とのつながりもできて福知山への愛着がより一層深くなり、定住を決めました。」
私「移住してみてイラストレーターとして心境の変化はありましたか?」
安岡さん「自然豊かな環境のせいか、心が落ち着いてイラストが書けるようになったと思います。風景がきれいで、ストレスが減ったとも思います。通勤ラッシュがないこともすごく良かったですね。」
私「移住することによって、失ったものってありますか?」
安岡さん「う~ん、うまく言えないですけど、ひとつところに腰を据えて住むというこだわりは減ったかも。転居するワクワク感を楽しむ自分がいる、というか(笑)」
移住者のイメージは、人見知りしない、自己主張がはっきりしている、行動力があるといった精神的にタフな人だと思っていました。実際そういう人も多いと感じましたし。
でも安岡さんは、どちらかというとおとなしく、自分が自分が、と前に出るようなタイプではない印象を受けました。彼女は周りの人の支援によって移住という低くはないハードルを軽々と乗り越えられたのでしょう。
超アグレッシブではない人も、人との温かいつながりと交流の中で移住を楽しんでいる様子が見えて、同じような性格の私(笑)も勇気をもらえたような気がしました。

安岡さんのイラストは優しくて、とても温かい気持ちになります。

安岡さんがイラストを描く時、大切にしていることは「ハッピーサイクル」なのだとか。見る人が笑顔になったり、幸せになるようなイラストを描きたいと思っているそうです。はい、その気持ちちゃんと伝わってきますよ。
「由良川沿いの土手を歩くのが好き」という安岡さん。福知山へ移住して自分の居場所が見つかったのかもしれませんね。
福知山に移住した人4. 森さん(農業・廃校活用)
市街地から車で約15分くらい走ったところにある中六人部(なかむとべ)集落。そこには廃校を活用して農業やカフェを運営している会社があります。


いわゆる懐かしい昭和レトロ感満載の校舎ではなく平成になって建てられた、築30年ほどのまだ新しい近代的な建物です。

校庭にはお約束の二宮金次郎像が!なんかちょっとポップな金次郎さんです(笑)

建物内にはそこかしこにセンスの良さが光っています。「廃校を利用して農業をする」というイメージとはちょっと違いました。

ある部屋にはなんとスケボーのランプが。。。これ、スタッフの手作りなんですって。これは単なる農業やっている会社じゃないぞ。

校舎の建物を抜けた校庭跡には、7棟の大きなイチゴ栽培ハウスがありました。

ハウス横に止まっている車もやんちゃです。やっぱりこの会社、ただものじゃなさそう。

ハウスの中は、プランターで栽培されているイチゴが並んでいました。
現在3種類のイチゴ(紅ほっぺ、かおり野、章姫)を作っているそうです。「あれっ?イチゴの位置がずいぶん高いな。イチゴ狩りってもっと下の方にしゃがんで摘むんじゃなかったっけ・・・?」

館内にはカフェもあります。

THE 610 BASEのスタッフ 森さんです。
「?」がたくさんあるのでいろいろ質問をぶつけました。それに対する森さんのお答えがこちらです。
「もともとは電気事業の卸をやっている会社です。事業多角化の為に、新規事業のアイデアを社内で募りました。介護タクシーや魚の養殖案などいろいろ出た中で、福知山という土地で役立てる意義のある仕事は・・・という点から「農業」を選んだのです。
やろうとしていることは農業ですから、最初は農地を探していたんです。しかしなかなかこれだ、という農地が見つからない中、時代は学校の統廃合が急加速しており、廃校になる学校が増えていました。
まだ新しい校舎なのに廃校にするのはもったいない、何か役に立てないかなと。学校は人が集まる場所です。校庭は広くて日当たりもいいからここを農地にすればいいんじゃないか。役目を一旦終えた廃校が、もう一度人が集まる場所になれば地元の人たちも嬉しいんじゃないかな、と。
電気事業の会社なので、農業はノウハウがありません。最初はトマトを作ろうとしたんです。この地ではそれが無謀だとわかって断念したり。それはもう試行錯誤の連続。動きながら答えを探していきました。
単に農作物を作って売るだけでは面白くないな、「●●狩り」のようにお客さんと交流できたらいいな、とイチゴにたどり着きました。
イチゴは福知山名産ではなかったですが、逆の見方をすると競合がいないのでバッティングはしない。イチゴはイチゴ狩りができたり、女性や子どもが好きだから人が集まりやすいのでは?と思いました。ほぼ1年を通じて栽培することもできるし。
イチゴのプランターの位置が高いのは、イチゴ狩りの時、お客さんが高い位置の方が摘みやすいし、生産者としても作業がしやすい、少ない土の量でも育てやすいということでこのプランター方式にしました。
今後はイチゴだけじゃなく、クラフトビール作りをしたいと絶賛計画中です。
あちこちにこだわりが見える設えですが、THE 610 BASEが大切にしていることは、次の4つだそうです。
- ヴィンテージ感
- イギリス風
- 手づくり感
- 人(プロ)任せにせず、自分たちで作る
森さんは、新卒で今の会社に就職したもののモノづくりがしたいと退職し、豆腐屋をやったりしていたのですが、改めて会社から声がかかり、出戻ったそうです。
「会社から声をかけてもらったのも嬉しかったですが、僕の人生でこんな仕事ができるとは思ってもみなかった。実際仕事は大変なことも多いですが、やっていて楽しいです」
「僕ら、お客さんから「イチゴの妖精」って言われてるんですよ。たった2人のお客さんからですけど(笑)うれしいですね。」
ちなみに森さんは福知山生まれではなく、京都府亀岡市出身。福知山という町は、まったく関心のない町だったそう。
しかし実際住んでみて、福知山の人たちの温かさに救われ、勇気をもらえたと言います。
「普通、外から人が移住してきたら、地元の人から嫌がられること多いじゃないですか。でもここ中六人部の人たちは温かかったんです。この廃校跡を使って農業をしたい、と言ったら、「よしわかった!じゃ俺たちはなにしようか」と言ってくれたんです。地元の人たちも廃校に賑わいが戻ったら嬉しいと思っていただけたのかなぁと。」
この未知の新事業ビジネス、採算面からみてどうなのか、ズバリ訊いてみました。
「ビジネスはビジョンとその先の予測が大事じゃないですか。でもこの事業はなかなか予測できません。何をもって成果とみるかですが、正直収支面ではまだまだです。でもこの事業を展開したことで、自治体と繋がりができました。イチゴ農家さんと繋がりができました。農業に進出したという広告宣伝効果もあって会社の知名度が上がりました。この事業をきっかけに新規で電気工事を受注できたりしているんです。そういう間接的な成果も意味あるんじゃないかと思います。」
今THE 610 BASEは5人のスタッフで運営されています。毎日忙しく試行錯誤の連続だそうですが、
「僕たちのやっていることは嘘ではないという誇りがあります。こだわりを大切にし、急がず焦らず一歩づつ進んでいきたいと思います。僕たちはFARMERじゃなく、FUNMERですから」
がんばれ、若きFUNMERたち!