世界中でネット通販を手がけるファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」がこの秋、日本でリアル店舗の本格展開に乗り出した。東京に常設店を、大阪に期間限定ポップアップストアをオープンし、顧客獲得に力を入れる。年商がユニクロを超えたとされる同社だが、一方で激安価格の背景には中国の長時間強制労働が関与しているとの疑惑報道もある。

ネット通販に特化し激安ファッションを展開

「シーイン」はリアル店舗を一切持たず、およそ150ヵ国にアパレル商品などのネット通販をしている。

2020年12月に日本語の販売サイトを開き、その後LINEの公式アカウント開設や東京ガールズコレクションへの参加などで認知度を高めた。ユーチューブやインスタグラム、ティックトックやKOC(キーオピニオンコンシューマー)と呼ばれる影響力を持つ消費者を活用し、Z世代を中心に販売展開する。

消費者を引き付ける一番の武器は、激安ともいえる価格帯だ。小物は数十円から、トップスは200~300円からの破格値で販売し、80~90%引きのセールもざら。ECサイトにアクセスするだけで大幅な割引券が入手できるなど、若年層の心をつかむ施策で訴求する。

未上場のため、売上高は公開していない。しかし、中国経済メディア「晩点Latepost」の報道によれば、2021年の売上高は前年の2倍の約200億ドル(約2兆4,000億円)に達したという。アジア最大のアパレル企業とされるファーストリテイリングの2022年8月期売上高は2兆3,000億円のため、シーインが上回ったことになる。

世界初のリアル店舗を東京と大阪にオープン

シーインはこのほど、世界初のリアル店舗進出を日本で果たした。2021年に閉店した「ユニクロ心斎橋店」の跡地に、今年10月から来年1月の期間限定でポップアップストア「SHEIN POPUP OSAKA」をオープン。11月13日には東京原宿に常設ショールーム「SHEIN TOKYO」を開いた。すでに6月から7月にかけ、全国5都市で日本初のポップストアイベントを開催している。

両店舗にはそれぞれ異なる世界観をイメージした試着室や、ファッション体験を楽しめるフォトスポットを複数用意。“試着できない”というECならではの不満を解消し、商品購入に至る過程も楽しめるようにした。商品はその場では販売せず、タグを読み取ってネット経由で注文する。

新疆ウイグル地区での強制労働に関わる疑惑が浮上

このように順風満帆に見えるシーインだが、中国の新疆ウイグル自治区に住む人たちを安い賃金で強制労働させている疑いが浮上している。

人権団体のパブリック・アイが2021に公表した報告書によると、シーインの商品供給元6社で働く10人の労働者に聞き取りをしたところ、1週間の労働時間は合計75時間に及び、休日は月に1日だったという。

チャンネル4とThe i newspaperの潜入調査報道によれば、シーインの服を作る中国工場の労働者はだいたい1日18時間働き、休日は月1日だった。基本給がない場合も多く、服1着を仕上げる報酬はわずか4セント(約6円)にすぎなかった。

調査員は偽名で2つの工場で働き、現場の厳しい労働環境などを秘かに撮影。「SHEINマシンの内部・語られない事実」と題した動画がチャンネル4で今年10月に公開され、大きな反響を呼んでいる。

シーインの強制労働については、最近ツイッターにも 、「Help Me」「Need Your Help」など助けを求める言葉を印字した商品タグ写真がアップされた。労働者からのメッセージではないかとの疑惑が広がっている。

ウイグル問題は、特に欧米では深刻な人権侵害とされる。2021年には米政府の輸入禁止措置に違反したとして、ユニクロの綿製シャツが米国税関で輸入を差し止められた。こういった事態を受け、日本のアパレル企業もウイグル地区生産綿の中止を相次ぎ表明している。

現代社会の消費者行動は、SDGsやエシカルへと強く動いている。もしもシーインの激安商品が“低賃金強制労働の賜物”であるならば、消費者の選択肢も変わってくるのではないだろうか。

文・MONEY TIMES編集部

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