「仕事に取り組めなくなる」西野式の問題点
いざ仕事に取り組もうと思った際に、「気が重い」「この仕事は大変そうだ」と感じ、「明日以降に取り組もう」と仕事を先送り・先延ばししてしまった経験は誰でもあるかもしれない。
アメリカのベストセラー作家アン・ラモットの著書『Bird by Bird(ひとつずつ、ひとつずつ)』では、当時10歳だったアンの兄が学校から3ヶ月前から出されていた宿題を提出日の前日にもかかわらず全く手をつけられず、父親の前で号泣するエピソードが語られている。
宿題の内容は鳥の生態について書くものだった。アンの兄は開いてさえもいない鳥の図鑑や本を前に今からやる宿題の量に気圧されて泣いていた。
すると作家だったアンの父はその兄の横に座り「ひとつずつ、ひとつずつ片づけていくんだよ。最初から、一羽ずつ(Bird by Bird)ね」とアドバイスした。
アンの父のアドバイスは秀逸だが、そもそもなぜアンの兄は3ヶ月前から出ていた宿題に全く手をつけられなかったのか。それはやらなければならない宿題の量に気圧され、自分の中で心理的なハードルが上がってしまっていたからだ。
西野式のようにプロジェクトをまとめて終わらせようとするやり方の問題点はここにある。
アンの兄が宿題にとりかかれなかったように、まとめて仕事に取り組もうとすると心理的なハードルが上がってしまう。その結果仕事を先送りして、締め切りギリギリまで仕事に取りかかれなくなるのだ。
締め切りギリギリまで仕事に取りかかれないとどうなるか。
「ヤバい、締切が近づいているのに、全然やれていない」と追い詰められるストレス。
いざ仕事にとりかかってみたら予想以上に大変な仕事であることが判明し、「今日は深夜まで残業だ……」という予想外の残業の発生。
あるいは「事前にAさんに資料をお願いしなければいけなかった。今からだと〆切に間に合わない……」という不測の事態の発生。
いずれも社会人なら経験したことがあるのではないかと思う。
まとまった量の仕事を前にした時、西野氏をはじめ仕事に熟練した人ならば、心理的なハードルを乗り越えることはむずかしくないのかもしれない。
しかし我々のような一般のビジネスパーソンがまとめて仕事に取り組もうとすると、心理的なハードルを乗り越えることができず締め切りギリギリまで仕事に取りかかれないことに頭を悩ませる。