11月初めにツィッター社が全従業員の半数に当たるおよそ3,800人の解雇を発表したが、その衝撃が冷めやらない中でアマゾンとメタ(旧フェイスブック)の大規模な人員解雇が報じられた。世界的な巨大IT企業の大量解雇が止まらないのはなぜだろうか。

自社史上最大の1万人規模の大量解雇に踏み切ったアマゾン

ニューヨーク・タイムズは11月14日、アマゾンがおよそ1万人の従業員の解雇に踏み切る方針と報道した。人工知能の「アレクサ」を扱うデバイス部門や、人事、小売り部門などが対象となる見通しが明らかになった。

続いて、17日にはブルームバーグが大量の人員削減を継続するアンディ・ジャシーCEOのコメントを発表。デバイスや書籍部門にはすでに解雇が通知され、採用や人事などの一部に対しても通知したという。こういった対応は来年まで続き、さらなる人員整理が見込まれる。

同社はコロナ禍による「巣ごもり需要」を受け、2020年初頭からの2年間で従業員をほぼ倍増させた。しかし、巣ごもりが一段落したこともあり、昨今の業績見通しは予想を下回る結果となった。

先月は、クリスマスなどのホリデー商戦を含む10-12月(第4四半期)の売上高が予想よりも低調になるとの見通しを示し、株価が急落。今月3日には、今後数ヵ月間は新規採用を停止すると発表していた。

これまでは人員削減には踏み込まず、新規採用抑制による自然減で対応してきたが、もはやそれでは困難と考えたと見られる。

メタの解雇対象の半分は増やしすぎたテクノロジー部門

フェイスブックとインスタグラムも傘下に抱えるメタは11月9日、全従業員の約13%に当たる1万1,000人の解雇を発表した。雇用凍結を2023年第1四半期まで延長し、スリムで効率的な企業体質を目指すという。

その後のロイターによる報道で、解雇対象者の約半分はテクノロジー部門であり、スマートディスプレーとスマートウォッチの開発を打ち切ることが分かった。音声およびビデオ通話ユニットを他のメッセージングチームと統合し、新しい部署を設立するなど組織再編成を進める。

同社はフェイスブック時代から、各種新規プロジェクトに向けて急速に雇用を拡大してきた。しかし、ここ2年ほどは収益減の要因となる人件費を含む一般管理費などが膨張。収益に見合わない人材コストを投入していたことが明らかになった。

今回の大量解雇について、マーク・ザッカーバーグCEOは従業員へのメッセージの中で、過剰な事業拡張による収益減少を予測できなかったと謝罪。仮想空間「メタバース」など優先度が高い少数分野により多くのリソースを投入するようにシフトしたが、収益の伸びに見合わなかったと語った。

背景には急速な金利上昇やコロナ禍特需の反動

わずか1週間ほどの間に相次ぎ明らかとなったフェイスブック、アマゾン、メタという世界を代表する巨大IT企業の大量解雇の要因は、連邦準備制度理事会(米国)による急速な金利の値上げが挙げられる。これによって企業に景気減速への懸念が高まり、まずは人件費を抑える必要があると経営者が判断したためだ。設備や研究開発への巨大投資が不可欠なIT企業は金利に敏感なため、当然の措置ともいえよう。

コロナ禍による「巣ごもり需要」の反動もある。この時期は個人がオンラインショッピングを、企業がクラウドサービスを利用する機会が急速に広がり、IT企業は人件費や開発費への大規模投資を実施。しかし、コロナがある程度収束し共存意識も生まれたことによって特需効果が減速し、投資コストが重くのしかかった。人手不足をカバーするために賃金が大幅に上昇したことも、収益確保の足かせとなったと思われる。

大幅な利上げにより景気後退の不安が募る中、大量解雇に踏み切る動きは3社に限らずIT業界全体に広がっている。こういった状況下で、収益を守るための大規模な人員解雇の動きは当分の間続くと見られる。

執筆・渡辺友絵

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