急病や事故などで救急車を呼んだ場合、原則として費用は発生しない。しかし、救急車を呼んだためにかえって医療費が高くついてしまうケースがある。軽く1万円を超えることはざら?

軽症の場合に請求される選定療養費

日本の場合、救急車を要請しても費用がかからないのは、出動にかかる費用が税金で賄われているためだ。では、なぜ救急車を呼ぶと医療費が高くなるのか。理由は、搬送先の病院によっては、初診時にかかる選定療養費を請求するケースがあるからだ。

選定療養費は、紹介状なしで大病院を受診する場合に徴収されるもので、初診の場合は5,500円(税込)かかる。軽症や日常的な病気の治療は中小の病院、救急や重い病気の治療は大病院という役割分担を進めるため、2015年5月に成立した「医療保険制度改革法」により導入された。

緊急性の高い患者には請求されないものの、例えば救急車で大病院に搬送されたが入院にはならなかった場合、選定療養費を請求される可能性があるのだ。

消防庁の調べによると、2021年に救急車で搬送された人を傷病程度別に見ると、44.8%が「軽症」だった。この中には、交通事故にあって自分で病院に行けず救急車を呼んだケースなども含まれている。しかし、救急車で運ばれた人の半数近くは、入院の必要がないと判断されていることになる。

自分で近所の病院を受診できる状況にもかかわらず安易に救急車を呼んだために、思わぬ費用がかかってしまうことにもなりかねない。

軽症利用が有料化議論の一因に

そもそも軽症の人の救急車利用は、出動件数増加の一因ともなっている。消防庁の調べによると、2021年の救急車出動件数は約619万件で、搬送人員は約549万人に上った。いずれも近年、増加傾向にある。

2015年には、財政制度等審議会が救急車の一部有料化を検討するよう、財務大臣に提言するなど、有料化議論も巻き起こっている。

こうした現状を踏まえ、消防庁は、救急車を呼ぶ場合の緊急度判定を促す冊子を作るなど、適正利用を呼びかけている。同冊子によると、実際に出動要請のあった緊急性の低いケースとして「新聞紙で指先を切った」「鼻をかむとタオルに血がついて困る」などの事例が挙がっている。

ちなみに2020年の119番通報から救急車が現場に到着するまでの平均時間は8.9分で、2010年の8.1分と比べると、約1分遅くなっている。

いつでも無料で駆けつけてくれる救急車は、日本の救急医療システムを支える重要な要素だ。制度の維持には、緊急の場合にはためらわず要請し、軽症の場合には利用を控える一人ひとりの適正利用が求められている。

文・MONEY TIMES編集部

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