ゴルフをたしなむ人にとってホールインワンは、一度は達成してみたい憧れの的だ。そのめでたさから、達成者が同伴者などに記念品を渡したりお祝いのお酒を振る舞ったりする「ご祝儀」の風習がある。一般のゴルファーにとってはうれしくもあり、同時に突然の高額出費にもなりかねないため、「ホールインワン保険」も用意されている。

ホールインワンで「ご祝儀」、理由やルーツ

ホールインワンの達成者が自ら祝儀を振る舞う慣習は、どのような理由やルーツがあるのか。

ホールインワン確率は?

そもそも、ホールインワンを達成する可能性はどれほどなのだろう。初心者からプロまで全てのゴルファーを対象としたホールインワンの確率は、1/33,000というアメリカのデータがある。中級者以上のアマチュアで1/8,000から1/14,000、ツアープロで1/3,700だという。ホールインワンより達成率が低いといわれるアルバトロスは、1/200,000から1/100,000ともいわれ、同様にお祝いの対象となる慣習だ。

日本独自の文化?海外では?

達成者自らがご祝儀をする理由は、ホールインワンのその確率の低さだ。奇跡的な幸運を周りのプレーヤーなどにお裾分けをするほか、「厄払い」の意味合いがある。しかし、海外では飲み物を振る舞う程度であり、記念品やパーティまで準備する文化は日本独自のものだ。

ルーツは、ゴルフの本場イギリスにおいて、達成者が祝杯をおごる風習にあったようだ。海外でその慣習を経験したゴルファーが帰国し、日本でもお祝いを始めた。当初は飲み物をごちそうする程度だったが、1950年代後半以降、全国的なゴルフブームの興隆とともに「お祝い」の内容がより派手で高額なものになっていった。

具体的にはどんなお祝いをする?必要額は?

現代では、ホールインワンを達成してもお祝いをしないケースもある。一方で、大盤振る舞いの風習が残っていることも少なくない。具体的にはどのようなことをするのか。

ゴルフ場に植樹や記念碑

達成したゴルフ場に、お礼の意味を込めて記念の植樹をする。達成年月日や名前などを刻んだプレートもつく。植樹は10万円程度が一般的だが、年間数万円の維持費がかかるケースもある。

記念パーティ、祝賀会など

達成者が食事代やお酒代、会場費などを負担して、祝賀パーティを開く。例えば、1人あたり8,000円、12人でちょっとした宴会をしたとしても9万6,000円となり、10万円近くかかる。もちろん、大規模な祝賀パーティを開くとすれば、数十万円になることもあるだろう。

プレーヤーに記念品やギフトカードの贈呈

タオルやゴルフボールなどに名前と達成年月日を入れて贈る風習もある。例えば、名入れのタオルであれば、10枚で2万〜3万円程度となる。

相手の趣味が分からなかったり、自分の名前を入れたものを贈ることに抵抗があったりする人もいるだろう。最近では、コンビニエンスストアなどでも使えるQUOカードなどのギフトカードが人気だ。カードに写真や日付を入れられる。

ただし、金券として使える額の他に製作費がかかるため、10枚前後の少ない枚数で作る場合は元値の2倍近い費用がかかることもある。1人あたり1,000円のカードを10人分作るとすれば、2万〜3万円が目安だ。

この他に、キャディへのチップとして3万円程度の支払いをしたり、記念コンペを開催したりするケースもある。

「ホールインワン保険」とは

上記のように、一度ホールインワンを達成すると、パーティや記念品などで少なくとも数十万円、規模によっては百万円単位の費用が必要になりそうだ。いつ起きるとも分からないからこそ「奇跡的でおめでたい」のだが、一般のゴルファーにとっては突然の出費に戸惑ってしまう。

そこで、ゴルファー向け保険には「ホールインワン保険」が存在する。ゴルフ場や記念品メーカーも、この保険の加入を前提としていることが多い。

ゴルファー保険とは

ゴルファー保険とは、どのようなものなのか。一般的な補償内容は以下だ。

・他人のけがやモノの破損に対する賠償責任補償
・自分がけがをした場合の傷害補償
・ゴルフ用品の盗難や破損に対する携行品補償
・ホールインワン・アルバトロス補償

ゴルフはスポーツである以上、周囲の人にけがを負わせてしまったり、モノを壊してしまったりするリスクが常にある。けがの程度によっては、病院の受診や、仕事に差し支えて金銭的な損害が出るケースもある。もちろん、自分自身のけがも同様だ。

他に、ゴルフ場でクラブなどの盗難や破損も起こり得る。時価額や修理費用が損害額として支払われる。補償額や範囲はプランによるが、ゴルファー保険は一般的にこのようなケースを補償している。

ホールインワン保険の注意点

他のスポーツの保険と異なり、ゴルフで特徴的なのがホールインワン保険だ。達成した場合のお祝い費用を補償する。オプション加入の場合が多い。

ただし、ホールインワン保険の適用には条件があるため、注意が必要だ。ホールインワンのお祝いは日本独自の文化であるため、国内でのプレー・達成が対象になる。不正を防ぐためにキャディや後続の参加者など「他人」による証明を条件としている。

「悲願達成、だけど…」とならないように

ホールインワンはゴルファーにとっての悲願ともいえる。もしも達成できたら、一生の思い出になるかもしれない。しかし「お祝い」のために突然数十万円、数百万円の出費が必要だと聞いたら、せっかくの喜びも一瞬で青ざめてしまうだろう。

プレーヤーは幸運の「万が一」に備えて、保険の加入を検討してもよいかもしれない。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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