日本の企業では現在、人材不足が深刻化しているという。では、どのような職種の企業で人材が不足しているのか?また、どのようなスキルの持ち主が求められているのだろうか?転職先として人材不足の業界を選ぶ際のメリットも紹介しよう。
深刻なIT人材不足
帝国データバンク調べ「<速報>人手不足に対する企業の動向調査」(2022年9月時点)によると、企業の人材不足感は加速しており、正社員が人材不足の企業は半数を超えている。
正社員が不足している企業を業種別に見てみると、最も人材不足企業の割合が多いのは「情報サービス」分野で71.3%。つまり、IT人材不足が深刻ということだ。続いて、「人材派遣・紹介」分野も65.0%が人材不足となっており、やはりIT人材の派遣需要の高さに追い付いていないという声が多い。
以下、3位「メンテナンス・警備・検査」、4位「建設」、5位「旅館・ホテル」、6位「自動車・同部品小売」、7位「運輸・倉庫」、8位「広告関連」、9位「金融」、10位「農・林・水産」と続く。
なお、2022年10月からは国内旅行代金を補助する「全国旅行支援」が始まっているので、観光関連業種全般で急激な人材不足が進行する可能性も高い。
人材不足業界が求めるスキルは?
では、具体的にはどのような人材が求められているのか?厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」では、スキル別の需要の高さについて、人材不足の企業を業種別に紹介している。正社員の需要を表にまとめると次のようになる。
人材に求められるスキル | 最も需要の高い業種 | 次に需要の高い業種 |
---|---|---|
海外展開に 必要な国際人材 |
宿泊業・ 飲食サービス業 |
サービス業(他に分類されないもの)、 学術研究・専門・技術サービス業、 製造業、卸売業、小売業 |
研究開発等を 支える高度人材 |
情報通信業 | 学術研究・専門・技術サービス業、 製造業、サービス業 (他に分類されないもの) |
現場の技能労働者 | 建設業 | 情報通信業、不動産業・物品賃貸業、 サービス業(他に分類されないもの) |
現場で定型作業 を担う人材 |
運輸業・郵便業 | 建設業、サービス業(他に分類されないもの)、 宿泊業・飲食サービス業、 生活関連サービス業・娯楽業 |
一般的な事務職 | 金融業・保険業 | 生活関連サービス業・娯楽業 |
中核的な管理職 | 情報通信業 | 金融業・保険業、宿泊業・飲食サービス業、 運輸業・郵便業、サービス業 (他に分類されないもの) |
社内全体の人材 マネジメントをする専門人材 |
宿泊業・ 飲食サービス業 |
金融業・保険業、情報通信業、 学術研究・専門・技術サービス業、 サービス業(他に分類されないもの) |
財務や法務の専門人材 | 金融業・保険業 | 情報通信業、宿泊業・飲食サービス業 |
労務管理 (就業規則の作成・変更など)を 担当する専門人材 |
宿泊業・ 飲食サービス業 |
運輸業・郵便業、 サービス業(他に分類されないもの) |
マーケティングや 営業の専門人材 |
情報通信業 | 宿泊業・飲食サービス業、 サービス業(他に分類されないもの) |
M&Aのための専門人材 | 運輸業・郵便業 | 金融業・保険業、学術研究・専門・技術サービス業、 卸売業・小売業、サービス業 (他に分類されないもの) |
社内事務のIT化を 推進する人材 |
金融業・保険業 | 運輸業・郵便業、宿泊業・飲食サービス業、 医療・福祉、製造業、卸売業・小売業 |
システム・アプリケーション等 を開発する専門人材 |
情報通信業 | 金融業・保険業、学術研究・専門・技術サービス業、 卸売業・小売業、運輸業・郵便業、製造業 |
人材不足業界への転職を考えている人はこれを参考に、自身のスキルがより求められている業種を中心に転職先を探すと、よい条件で入れる企業を見つけやすいだろう。
転職先として人材不足業界を選ぶ6つのメリット
では、転職先として人材不足業界を選ぶ際の、一般的なメリットを紹介しよう。
①30代以上でも採用されやすい
一般的には30代以上になると転職しにくくなるといわれるが、人材不足の会社では30代はもちろん、必要とされるスキルがあれば40代以上でもチャンスがある。
②未経験者でもOK
通常、中途採用では経験者が優遇される。しかし、人材不足の会社ではその業界の未経験者であっても受け入れてもらえることがある。特に財務や法務、ITエンジニアなど専門性が高く、業種が違っても応用が利くスキルを持っている場合はスムーズな転職が期待できる。
③経験者はさらに優遇される
人材不足企業では、同業種の経験者は即戦力として当然期待される。前職で豊富な経験を積んでいれば、好待遇を期待できそうだ。
④スキルの幅を広げる機会となる
人材不足業界への転職でこれまで経験したことのない業種を選ぶと、そこで新たな学びを得ることになりスキルの幅が広がる。将来そこを辞めた場合にも、得たスキルは確かな財産となってくれる。
⑤出世のチャンスがある
人材不足の会社では離職率が高いため、長く在籍しているだけでも昇進する可能性がある。そこで得た役職もまた確かな財産となるだろう。
⑥働き方改革に積極的な企業も
人材不足の会社の中には、優秀な人材を育てて会社に定着してもらう長期的ビジョンに基づき、柔軟な勤務形態を取り入れたり、社員教育や福利厚生に力を入れたりしているところもある。
特に好業績で仕事量が増えすぎて人材不足の業界などで、そうした会社が見られる。転職時には給料だけでなく、そうしたところもよく検討したい。
人材不足業界への転職にはデメリットも
人材不足業界への転職にはもちろん、デメリットも考えられる。想定されるデメリットはまず、離職率が高く社員の間で会社への帰属意識が薄いため、チームワークに欠けやすい点がある。こうした社員との仕事はなかなかにストレスがありそうだ。
企業によっては多くの人材を確保しようとして、入社時の採用基準が甘かったり、急な社員増で社員教育が追い付かなかったりするケースもある。その場合、自分自身は十分なスキルを持っていても、スキルに欠けた同僚との仕事はやりにくいものとなるだろう。
人材不足を理由とする社員1人あたりの仕事量の多さも問題になるかもしれない。そうした想定されるデメリットを事前に避けるには、仕事を探す段階で雇用条件などを精査し、入社面接でも企業側に不明な点をきちんと確認しておくべきだ。
文・モリソウイチロウ
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
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