学歴社会といわれるように、一般論としては高学歴のほうが高収入となるといわれている。しかし、現実には高学歴なのに低収入な人もいれば、低学歴なのに高収入な人もいる。どうしてそうした現象が起きるのだろうか。

40代前半では高卒の平均月給30万円、大卒は40万円

冒頭で触れたように一般論としては、高学歴のほうが収入も高い。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、学歴別の平均賃金(月額)は高卒と大卒で8万8,000円ほども違う。高卒と大卒なら約18万円の差だ。

年齢別のデータもあるが、ここでは参考までに40~44歳男性のもののみ紹介しよう。これによると、高卒と大卒では月10万円、高卒と大学院卒では月20万円もの差があることになる。学歴社会といわれて納得のいくデータといっていいだろう。

高校卒 専門学校卒 高専・短大卒 大学卒 大学院卒
男女平均 27万1,500円 28万8,400円 28万9,200円 35万9,500円 45万4,100円
40~44歳男性 30万7,700円 32万7,500円 35万6,000円 40万7,200円 50万3,800円
(出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より筆者作成)

60歳までの生涯賃金は男性では高卒と大卒で6,000万円差

独立行政法人労働政策研究・研修機構による「ユースフル労働統計2021-労働統計加工指標集-」には、生涯賃金のデータが記載されている。

同統計では、学校卒業後にフルタイムの正社員を続けた場合の 60 歳までの生涯賃金(退職金を含めない)を掲載。表にまとめると次のようになる。

男性 女性
中学卒 2億円 1億5,000万円
高校卒 2億1,000万円 1億5,000万円
高専・短大卒 2億2,000万円 1億8,000万円
大学・大学院卒 2億7,000万円 2億2,000万円
(出典:労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2021」より筆者作成)

中学卒でもそこまで低くはないと感じるかもしれないが、就業年数の長さは念頭に置くべきだろう。例えば、中学を卒業して60歳まで働いた場合と、高卒後すぐに4年制大学に入りスムーズに卒業した後すぐ就職した場合で比較すると、就業年数は前者のほうが7年間も長いことになる。つまり、7年間長く働いてもなお、生涯賃金は大卒よりも6,000万円も低いことだ。

一方、企業規模別で見た場合、企業規模が大きくなるほど生涯賃金は高額となる。男性で大学・大学院卒の場合では、企業規模1,000人以上では3億1,000万円となるのに対し、企業規模10~99人では2億1,000万円と1億円強の違いとなる。

これは、学歴そのものの比較ではない。しかし、高学歴でなければ大企業への正社員としての就職が難しいことを考えると、ここでも学歴と生涯賃金が関係していることは明らかだ。

「高学歴=仕事能力の高さ」ではない

以上、見てきたように、一般論としては学歴が収入に直結していることは否めない。だが、個人レベルの話としては、低学歴で高収入を得ている人やその逆に高学歴で低収入にあえいでいる人は少なからずいる。

どうしてそのようなことになるのか?まず、基本的な認識として押さえておきたいのは、高学歴の人は日本の学校教育に最適化された頭の使い方は得意でも、そのほかの能力は、その高い学歴が能力の高さを必ずしも保証しないことだ。

イノベーションの能力が高収入を得るカギに

学校の勉強とはすでに存在する知識を学び、応用するものである。例えば、「無」から「有」を生み出す能力には直結しない。たとえ高学歴の人であっても、企業では新しい価値を生み出すイノベーションを起こせなければ、出世・昇給から取り残されることもある。

逆にいえば、低学歴であってもそうしたイノベーションで実績を積めれば、出世して高収入を得ることもある。例えば、「あずきバー」で知られる井村屋グループの社長・中島伸子氏は短大卒業後アルバイトとして同社に入ったところからスタートし、社長の地位まで昇り詰めている。

文系博士号取得者に多いワーキングプア

博士号持ちは文句なしの高学歴だが、文部科学省の「博士人材追跡調査-第4次報告書-」によると、博士号取得者の年間所得は400万~500万円が14.0%と最も多く、人文系だけで見ると100万~200万円未満が19.6%もいる。

一般論としては高学歴=高収入であっても、ワーキングプアといえるレベルの博士号取得者も少なからずいることだ。背景には、もともと日本の企業は博士号取得者を雇いたがらないこと、人文系の学問が仕事で即戦力としてあまり求められていないことがあるのだろう。

低収入から抜け出すには?

では、高学歴にもかかわらず低収入に甘んじてきた人が、そこから抜け出すにはどうすればいいか?

基本的には、自身の学歴や能力に見合った業界・企業への転職が王道だ。適材適所の職種・職場にうまくはまれば相応の収入が期待できる。

新卒採用で入社する場合、就活の時間的な制約があったり自分の能力を十分把握できていなかったりして、自分にジャストフィットする仕事に就けていないことがある。その場合、改めて慎重に自分に合った業界や企業を選び直すことで収入アップを図れるはずだ。

例えば、大学時代に体育会系やイベントサークルを経験した人は、デスクワーク中心の仕事よりも営業職のほうが培ってきた能力を活用でき、仕事でいい成績を上げられるだろう。

逆に、大学で研究に熱中してきたような人は、その延長線上の仕事や机上でロジックを組み立てていくような仕事が向いているだろう。

一方、低学歴の人が高収入を狙いたいなら、成果に応じた報酬を得られる営業職などがよい。成果主義では学歴は関係ないからだ。

なお、人手不足の成長業界も狙い目だが、十分な人材がそろった 段階で選別される可能性があるので、それまでに十分な成果を上げてより上位の役職に昇進しておく必要がある。

文・モリソウイチロウ
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

【関連記事】
サラリーマンができる9つの節税対策 医療費控除、住宅ローン控除、扶養控除……
退職金の相場は?会社員は平均いくらもらえるのか
後悔必至...株価「爆上げ」銘柄3選コロナが追い風で15倍に...!?
【初心者向け】ネット証券おすすめランキング|手数料やツールを徹底比較
1万円以下で買える!米国株(アメリカ株)おすすめの高配当利回りランキングTOP10!