米テスラ社のイーロン・マスク氏はついに数ヵ月に及ぶ買収劇に終止符を打ち、10月27日にツイッター社を440億ドル(約6.4兆円)で買収した。同時にCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)などの経営幹部を解雇し、従業員も大幅削減したと報道されている。驚くのは幹部4人の退職金で、総額1億4,110万ドル(約208億円)の破格の金額が支払われる模様だ。

社員の大量削減だけでなく経営幹部も解雇

マスク氏は10月30日に当局へ提出した申請書で、正式に同社のCEOに就任したことを明らかにした。CEOだったパラグ・アグラワル氏をはじめ、他の取締役9人全員を解雇したと申請書に記載されている。アグラワル氏のほかにCFOのネッド・シーガル氏、最高法務責任者のビジャヤ・ガッデ氏、最高顧客責任者のサラ・パーソネット氏といった幹部がツイッター社を離れたのだ。

驚くほど迅速かつ一方的な解雇にも見える。しかし、実はマスク氏に解雇されることにより、これら経営幹部は法外といえるほど高額の報酬を手にできるようだ。

主要幹部4人には計200億円超の驚愕の退職金

米国経済誌のフォーブスによれば、これら経営幹部4人は合計で1億4,110万ドル(約208億円)の退職金パッケージ(退職に応じることを条件とする特別退職金などの優遇措置)を受け取れる可能性があるといわれている。アグラワル氏は5,740万ドル、シーガル氏は4,450万ドル、ガッデ氏は2,000万ドル、パーソネット氏は1,920万ドルとの予想だ。

巨額の退職金を入手できるのは、彼らが経営陣の雇用契約におけるCiC条項 (買収=経営権の移動に伴う場合の権利や手当を定めたもの )によって、解雇にあたり一定額の退職金などを受け取れる取り決めがあるからだ。CiC条項の内容は、規制当局への提出書類にて開示されている。

例えば、2021年におけるアグラワル氏の年俸は、提出書類では62万3,077ドルだ。解雇にあたりさまざまな特別優遇パッケージが適用され、5,740万ドルの金額に達したと思われる。

社員には法より50%多い3ヵ月分が支払われる

ワシントンポストによると、マスク氏は買収にあたりツイッターの従業員7,500人のうち75%近くを削減するつもりと投資家に語ったという。その後、マスク氏本人が75%の数字は不正確と訂正したものの、11月4日には全従業員の半数にあたるおよそ3,800人に解雇通知メールが配信されたとAFP通信が伝えた。解雇にならなかった従業員たちには、雇用を継続する旨のメールが届いたという。

マスク氏は大規模解雇の背景について、「残念ながら人員削減は、会社が1日あたり 400 万ドル以上の損失を出しているため、選択の余地はない」とツイッターで発信。解雇された全員に対し、「法的に定められているよりも50%多い3 ヵ月分の給料に相当する退職金を提示する」とした。

ツイッター社が経営不振に陥っていたとはいえ、マスク氏が全社員の約半数を解雇する思い切った行動に出たことは、社会に大きな衝撃を与えた。

大量解雇は「深刻な損失上の問題」との説明から、企業側都合によるいわゆる整理解雇にあたると見られる。ツィッター日本法人の中にも広報部門を中心に解雇通知を受け取った社員がかなりいる。しかし、マスク氏が提示した「50%以上多い3ヵ月分の給料相当の退職金」をどうとらえているかが注目される。

潤沢な退職金をもらった経営幹部はむしろラッキーといえる。だが、鶴の一声で突然解雇された海外や日本の一般社員の中には条件に納得せず、団体交渉や集団訴訟を進める動きも予測される。マスク氏が振るった大ナタの余波は、今後まだまだ続く可能性が高いといえるだろう。

文・渡辺友絵

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