「市内に一つだけの総合病院171床が19床の診療所になっちゃっても市民の死亡率や健康指標は変わらなかった(医療費は減った)」
という事実の裏には、おそらくそれまでの総合病院が無理に満床を維持していたという事実があったのだろう。(私はその時代の病院にいたわけではないので想像だが、多分そうなのだ。夕張市の詳細については拙著に詳細が載っている)
まあ、たしかに、重傷者が最も多かった第5波(昨年8〜9月)では、病床使用率が90%を超える地域もでていた。医療機関に入院できず自宅で亡くなってしまう人が出たり、本当に悲惨な事態となっていたのは報道のとおりだ。なので、その時点・その地区では今回のレポートの実態とは違って医療崩壊も起こっていたのかもしれない。
しかし、その時点・その地区においても、その地区の重症病床でどんな治療が行われていたのかは、結局の所不明なのは変わりない。「医療逼迫していただろう」というのは予想に過ぎないのだ。
そんな曖昧なデータで我々の行動が制限されていたのだ。
更に衝撃なのは、こんなにすごいサンプルデータが出てきたのだから、早速全国調査をやるべき!と思って当然のところだが、
「おそらく今後、誰もそこを調べようとしない」
という事実だ。
たしかにこうしたデータを得るためにはカルテを一つ一つチェックしていく必要があるので、かなりの労力になる。でも、それなりのお金をかけて本気で調べれば全ての実態が明らかに出来る。コロナ予算に計上した77兆円のうち、1兆円も当てればお釣りが来るだろう(多分そんなにかかるはずもない)。
やればできるはずなのに…
国民は本質的にはそういうデータを求めているはずなのに…
そんな調査は一切行われる気配すらない。なぜ行われないのか本当のところはわからない。
お金の問題かもしれない。もしかしたら裏には既得権益を損ねたくない医療業界の意向があるのかもしれない。
でも、「医療崩壊」を盾に緊急事態宣言や営業自粛など国民に大きな犠牲を要求するのなら、少なくともその医療崩壊の背景データをしっかりと精査すべきなのは当然だ。