そもそもの話、これまで国民は
「感染者・重傷者が増えると医療逼迫・医療崩壊がおこって、助かる患者も助からなくなってしまう!」
こんな恐怖のメッセージをテレビなどのメディアを通じて受け続けてきた。だからこそ緊急事態宣言や営業自粛などの痛みを受け入れてきたわけだし、だからこそTVなどのマスコミは「医療逼迫を防ぐ」ことを看板に掲げて大騒ぎしてきたわけだ。しかし、実際の現場の実態は全然違うかもしれないということをこのデータは示しているのだ。
でもなぜこんな単純なことが今までわからなかったのか?
その根本の原因は、日本の病院の経営方針や意思決定が「病院の自由」で運営されており、国の管理が行き届きにくいからだろう。病院は基本的に全てのデータを国に出すわけではない。それを良いことに(現場の実態は国にはバレるわけないので)とにかく報酬の高い「重症」ということにしておこう、重症病床もとりあえず埋めておこう、という経営重視の姿勢がまかり通っているのだろう(緊急整備されたコロナ報酬では特に)。
これは日本の病院の8割を占める民間病院で特にひどいのだが、今は公的病院ですら「経営」に追われ、収益の最大化(簡単に言えば満床を目指す)を求められている。となれば、公的病院のICUだって空いている病床は「埋める」という発想になるのは至極当然のことなのだ。
(実は多くの先進国では医療機関が国による公的運営のため収益確保のための「満床」は目指していない。また、病院内でどんな治療が行われているかは国に報告され一元管理されているのでそもそもごまかしが効きない。アメリカだけは民間病院が多くちょっと違うのだが、そのアメリカでは保険会社が医師の診療内容の一つ一つを細かくチェックして支払いの可否を決めるのでそれはそれで厳しいのが現状だ。ちなみに日本の健康保険は医師の診療内容についてほとんど口を出さない。形式的に「病名」さえついていれば、殆どの診療報酬がほぼ無審査で支払われる。)
ということで、本件を簡単にまとめると、
- そもそも日本の重症病床・ICUでどんな治療が行われているかはブラックボックスで国にさえよくわからないシステムだった。
- だけど、まあさすがにそんなデタラメなことにはなっていないだろうと多くの医療関係者は思っていた。
- しかし今回のレポートで「重症のうち7割は重症じゃなかった」という、衝撃のデータが暴露されてしまった。
というところだ。
実は私が経験した夕張市の医療崩壊も同様だった。