転職はそう何度もするものではないため、うっかりとNG行為を犯してしまいかねない。あるいは、「これくらいならいいだろう」という安易な考えで、重大なNG行為に手を染める者もいるだろう。ここでは、そうした転職時に注意したいNG行為を紹介する。

円満退社できない4つのNG行為

退職に際して、まず最も注意したいNG行為から紹介しよう。

NG① 顧客情報や独自ノウハウ、技術の持ち出し

前職で業務上知り得た顧客情報や独自ノウハウ、技術などを不正に持ち出すことはNG中のNGだ。多くは、雇用契約を結ぶ際に誓約書や秘密保持契約書などに、守秘義務やその範囲の記述があるはずなので、一度目を通しておくといいだろう。

特に同業他社へ転職する場合、そうした情報などを持ち出したい誘惑にかられるかもしれない。しかし、逮捕されるケースもある。

例えば、2021年にはソフトバンクの元社員が営業上の秘密を転職先である楽天モバイルへ不正に持ち出した疑いで逮捕されたことが明らかになった。2022年には、不動産会社の元社員が転職先の会社に顧客情報を不正に持ち出した容疑で逮捕されている。

では、顧客情報を持ち出してはいけないのは当然として、営業活動などで何度も顔を合わせているような相手と転職後に連絡をとるのもNGだろうか?

その判断は難しいが、前職の営業活動を邪魔する形でなければ道義的には許されそうだ。例えば、前職での取引内容に抵触しない、別部署の仕事を紹介してもらうことなら問題にはならないだろう。

NG② 退職エントリーをSNSなどに投稿する

退職時に、前職での経験を整理して文章化しSNSなどに投稿する人がいる。これを通称「退職エントリー」と呼び、テック企業などで多い傾向が見られる。

退職エントリーは、秘密保持契約書における守秘義務に抵触しない内容であっても、勤務先の内情に多少なりとも触れる。従って、前職関係者からの心証はよくないだろう。

中には前職の仕事環境のよさを強調するような退職エントリーもあるが、そうなると逆に転職先の心証に影響するかもしれない。「そんなにいい職場ならなぜ辞めたのか」という疑問を生じることにつながるからだ。

退職エントリーを書くことは絶対にNGではない。しかし、転職者にとってあまりメリットがあるものでもないので、できれば避けたい。

NG③ 退職をその直前に伝える

民法上では退職を申し出てから2週間後以降の退職が認められているので、法律を盾にとるのであれば、2週間前までに退職を伝えれば問題ない。しかし、円満に退職するなら就業規則や雇用契約書の定めにあるタイミングで伝えるべきだろう。通常は1~2ヵ月前までの申し出が定められている。

NG④ 退職代行サービスの安易な利用

正規の手続きをとってもなお退職時にトラブルになるのが明らかな場合や、すでに退職を試みているがなかなかスムーズに話が進まないような場合を除き、安易に退職代行サービスを利用すべきではない。

勤務先と社員との間に第三者である退職代行サービスが入り込むことで、表面上は円満に退職できたとしても、勤務先の心証的には円満ではない幕引きとなるからだ。

競合他社への転職は是か非か

はっきりNG行為とはいえないグレーゾーンの行為として、競合他社への転職も触れておこう。

競合他社への転職は、前職で培ったスキルを生かせるため一般的ではある。しかし、前職の勤務先と「競業避止の契約」を結んでいる場合は、損害賠償を請求される可能性もある。ただし、職業選択の自由が憲法で保障されているため、その「競業避止の契約」が合理的範囲を超えて職業選択の自由を妨げている場合は無効となる。

その“合理的範囲”の明確な規定はないものの、前職の勤務先にマイナスをもたらさないことが明らかであれば、競合他社への転職は職業選択の自由に基づき認められると考えていいだろう。

例えば、前職で培ったスキルや個人的に学んだ知識(守秘義務に該当しないもの)を転職先で生かすだけなら問題になるとは考えられない。

ただし、「同業他社へ転職した場合に退職金の額を半分にする」という規定がある場合、それを覆すのは難しそうだ。これは、退職金に功労報償的な性格があるためで、過去の判例でもそうした規定が適法だと認められている。

たまっている有給休暇の扱いは?

有給休暇がたまっている場合、退社日の直前にまとめてとり、休暇入り前日を最終出社日とすることも可能だ。通常、会社側は有給休暇の時期を変更できる。しかし、退社が迫っている場合は変更できないため、請求通りに休暇を付与しなければならない。

ただし、円満退社を目指すなら、最終出社日までに引き継ぎやあいさつなど退職前に必要な事柄は全て済ませておこう。諸手続きにおけるトラブルを避けるため、転職先の入社日は、有給休暇が終わって正式に退社した後のタイミングに設定するべきだ。

引き継ぎなどの都合上、どうしてもたまった有給休暇を使い切れない場合は、交渉して会社側に有給休暇を買い上げてもらえる。ただし、労働基準法ではそうした買い上げは違法ではない代わりに事業主側の義務でもないので、確実にそれが通るとは限らない。あくまで交渉次第になる。

――以上の情報を参考に、なるべく円満な転職を目指してみてほしい。

文・モリソウイチロウ
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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