いつも通り運転していたつもりが、突然現れた警察官に運転席の窓を「トントン」とされたり、交差点に響くマイク越しの「止まってください」の声にビクリとしたり、そのような経験をしたことがあるドライバーもいるのではないか。

警察による交通取り締まりは、事故を防ぐために欠かせない業務だ。しかし、「成績や給料のためにやっているのでは?」と疑問に思うこともある。交通違反の取り締まり件数にノルマがあるのか、実際の警察官の声を元に調査した。

交通取り締まりの実情

道路交通法はその目的を「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、および道路の交通に起因する障害の防止に資すること」としている(道路交通法第1条)。警察による違反取り締まりは、これらの法律に基づき、誰もが突然当事者になり得る交通事故を防ぎ、人々の命を守るために行われている。

誰が取り締まる?

日常的に交通取り締まりに当たっているのは、地域の交番に勤務する警察官や、所轄の交通課員や交通機動隊などだ。いわゆる「白バイ」も含まれる。パトカーや覆面パトカー、オートバイなどで行うこともあるが、交差点などでは徒歩でパトロールしていることもある。

取り締まりは交通事故が多発している場所など、実態に応じて実施されている。例えば、幹線道路などでの速度違反、交差点での横断歩道手前での一時停止違反、繁華街での飲酒運転などだ。自動車だけでなく、オートバイや自転車を取り締まることもある。

「切符を切られる」とは?

ドライバーは違反の内容や点数に応じて、反則金・罰金・免許停止などの処分を受ける。その際、反則金や罰金の支払いに必要な書類を渡されることから、取り締まりを受けることを「切符を切られる」ともいう。「切符」の正式な名称と内容は以下だ。

・青切符:「交通反則告知書」。一時停止違反や駐車違反、時速30キロ未満の速度違反(高速道路では時速40キロ未満)など比較的軽微な違反の場合。
・赤切符:「告知票・免許証保管証」。時速30キロ以上の速度違反(高速道路では時速40キロ以上)、無免許運転、ひき逃げ(救護義務違反)など比較的重い違反の場合。

年間の違反取り締まり件数は?

道路交通に関する政府統計によると、2021年の道路交通法違反取り締まり件数は約677万件だった。そのうち、速度違反や一時不停止など「動的違反」は532万件で、全体の約8割を占める。

取り締まり件数に「ノルマ」はある?

警察官により日夜行われている交通違反のパトロールだが、不意打ちや覆面の取り締まりもあり、「ノルマのためにやっているのではないか」との声も絶えない。個人の成績や給料アップのために切符を切っているのではないかとの批判だ。

ノルマではなく「目標件数」

交通取り締まり経験のある元警察官によると、必ず達成しなければならない「ノルマ」は課されていないという。ただし、1ヵ月あたりに切符を切る「目標件数」がある。ノルマとの違いは、達成率によって給料や人事評価に直接結びつくわけではないことだ。

警察官には日々さまざまな業務がある。交通違反の取り締まり件数が目標に至らなくても、総合的に職務怠慢でない限りはマイナス評価をされるわけではない。件数はあくまでも努力義務にすぎない。

実質的にはノルマと捉えていることも?

しかし、白バイ隊員など交通取り締まりが主な業務である場合は、特に目標件数を実質的なノルマとして意識しているケースもある。交番勤務の警察官などに比べると目標件数も厳しく設定される傾向にある。取り締まり件数が多ければ、表彰を受けるケースもあるようだ。

警視庁で交通機動隊などに所属していた元白バイ隊員によると、ドライバーがうっかりミスをしそうな場所で待ち伏せをしたり、違反をしそうな車をマークしたりしていたとの経験談もある。違反が頻発する場所は、「漁場」とも呼ばれているという。

警察官の給料はどうやって決まる?

地方公務員の給与制度は、「給料表」に基づいて決まる。給料表は、適用される職員の数や勤務実態を考慮してできる限り簡素化することが求められている。警察官の場合は「公安職給料表」だ。「巡査」や「警部補」「警視」などの等級と号数によって金額が決まる。例えば、高校卒業後に神奈川県警の警察官B区分になった場合、採用(入校)時の給与は約20万7,000円だ。

警察官もドライバーも、安全な交通社会を目指して

警察官は日夜、交通事故から国民の命や安全を守るために交通パトロールを行っている。取り締まり件数は、部署や担当業務によっては実質的に評価につながると意識されている場合もあるようだ。しかし、一般的にはペナルティなどのある「ノルマ」ではなく、士気を高めるための「目標」だ。

いずれも目指すところは、可能な限り事故を減らすことである点に変わりない。ドライバーも「切符を切られるか否か」ではなく、より安全な交通社会のために、ルールを守って運転したい。

文・MONEY TIMES編集部

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