「一番に言わなければいけないと思っているのは、値上げをしないということだ」。ファミリーレストラン大手サイゼリヤの松谷秀治社長が2022年10月12日、記者会見の冒頭でこう話し、「値上げしません」宣言として話題となった。原材料価格が高騰する中、価格維持は可能なのか。

低価格路線維持で客離れ回避

外食業界では、ウクライナ情勢などの地政学的リスクや円安により、原材料価格が高騰している。その影響を受け、2022年9〜10月にかけ、マクドナルドや吉野家、大手回転ずしチェーンのスシロー、くら寿司などが値上げに踏み切っている。

こうした状況の中での価格維持宣言。ツイッターでは「サイゼリヤ値上げしないって。愛してる。」「『値上げしません宣言』をしたことに敬意を表して、ひさびさにサイゼリヤ」「値上げが相次ぐ飲食業界の中でも、変わらぬ『500円ランチ』を続けているサイゼリヤを応援するぞー」などファンからは歓迎の声が上がった。

半面、「なぜそんな値上げをしないのか気になります」「どうしてこれで採算取れるのか、謎」など「宣言」に対する疑問の声も聞かれる。

同社の2022年8月期の連結決算は、売上高が1,442億円で前期比14.0%増、純利益は56億円で前期比の220.6%増となった。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う時短営業要請による協力金効果も大きい。

松谷社長は会見の中で、「物価は上がっているが、給料は上がっていない。非常に暮らしが厳しい状況になっている。その状況の中で、安くてよいものを出さないといけない使命がある」と発言した。

低価格路線でファンを増やしてきた同社にとって、コロナの影響で需要が低迷する中での値上げは、客離れリスクが大きい。価格を維持することで、客数を増やしたい意向がうかがえる。

円安で海外店舗は増益見込み

円安による輸入食材価格やエネルギー価格のさらなる上昇リスクを抱えつつも、海外店舗では逆に円安による増益効果が見込まれる。同社は、国内外に全1,553店舗(2021年8月期)を展開している。このうち、アジアを中心とした海外出店が464店舗を占める。

もっとも、海外事業の増益による一定の下支えは期待されるものの、海外の主な出店先は中国国内である。中国政府のゼロコロナ政策による再ロックダウンへの警戒もあることから、先行きは不透明だ。

同社の2023年8月期の業績予想は、売上高1,700億円、純利益44億円を見込む。アフターコロナを見据えた出店戦略の推進や、店舗や工場での食材ロスの削減、工場の設備改善による生産性の向上などでコスト削減を図るとしている。

コロナ第8波に対する懸念もあり、減少した客足が今後どのように回復するのかの見通しは難しい。経営努力による価格維持がどこまで可能か、厳しい経営判断が続くことになりそうだ。

文・MONEY TIMES編集部

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