相続税には基礎控除があり、正味の遺産の価額が基礎控除額を超えなければ相続税は無税です。ほかにもさまざまな特例や控除があり、要件を満たす人は相続税が無税になるケースもあります。基礎控除の仕組みと相続税の計算方法を確認しましょう。
目次
相続税が無税になる範囲
・遺産総額が基礎控除額以下の場合
・配偶者は1億6,000万円までは非課税
相続財産の範囲
・課税対象となる財産
・非課税となる財産
相続税が無税になる範囲
相続人は故人(被相続人)の財産を受け継いだ際、相続税が課せられます。相続税には、基礎控除や減税措置、特例などが設けられており、人によっては相続税が無税になるケースもあります。
遺産総額が基礎控除額以下の場合
相続税には、一定の金額までは相続税の申告・納税をしなくてもよいというボーダーラインがあります。正味の遺産の価額が「相続税の基礎控除額以下」の場合、相続税の申告・納税義務はありません。
相続税を計算する際は、相続時精算課税の適用を受ける財産や相続開始前3年以内の暦年課税による贈与財産を遺産総額に加えたうえで、故人の葬式費用や債務、非課税財産などを控除します(正味の遺産額)。
正味の遺産額が基礎控除額を超えた場合、その超えた部分のみが相続税の課税価格です。
相続税は「資産の再分配」によって経済格差を減らすのが目的です。財務省によると、相続税がかかる割合は亡くなった人の約8%とされます。
参照:相続税について教えてください。|財務省
配偶者は1億6,000万円までは非課税
被相続人(亡くなった人)の配偶者は「配偶者の税額の軽減」によって、相続税が無税になる可能性があります。取得した正味の遺産額が以下のいずれかを超えない限り、相続税は生じません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額 配偶者の税額の軽減を受けるには、相続税の申告期限までに、必要書類と税額軽減の明細を記載した相続税の申告書を税務署に提出します。財産が未分割の状態では、配偶者の税額の軽減は原則として適用できない点に注意しましょう。
参照:No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁
相続財産の範囲
相続税の計算にあたり、財産がどれだけあるかを調べる「相続財産調査」を行います。「相続税の課税対象になる財産」と「課税対象にならない財産」をしっかり区別しましょう。
課税対象となる財産
相続財産の中で「金銭的に見積もれる経済的価値のあるもの」は、基本的にすべてが課税対象となります。死亡した時点で被相続人が所有していた財産は「本来の相続財産」といいます。以下はその一例です。
- 現金・預貯金
- 有価証券
- 貴金属
- 不動産
- 貸付金
- 特許権・著作権
- ゴルフ会員権
本来の相続財産に対し、「死亡したことをきっかけに財産となるもの」は「みなし相続財産」とよばれます。民法上は相続財産ではありませんが、相続税の計算時は相続財産として課税されるのが特徴です。代表的なものには、「死亡保険金」や「死亡退職金」があります。
本来の相続財産とみなし相続財産以外では、以下のようなものも課税対象です。
- 相続開始前3年以内に贈与された財産
- 相続時精算課税制度を適用して贈与された財産
- 「教育資金」や「結婚・子育て資金」の一括贈与に係る贈与税の非課税の適用を受けた場合の管理残額
参照:No.4105 相続税がかかる財産|国税庁
非課税となる財産
「日常礼拝をしているもの」は、相続税の課税対象にはなりません。具体的には、仏壇・仏具・墓石・墓地・神棚などが挙げられます。
ただし、投資の対象となるものや、売買目的で所有しているものは対象外です。そのほか、以下のような財産も非課税となります。詳細は国税庁のウェブサイトで確認しましょう。
- 一定の要件に該当する公益事業者が取得した財産で、公益を目的とする事業に使われるもの
- 心身障害者扶養共済制度に基づく給付金を受ける権利
- 死亡保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
- 被相続人に支給されるべきだった退職手当金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
相続財産には「プラスの財産」だけでなく、債務などの「マイナスの財産」も含まれます。相続税の計算時は、遺産額からマイナスの財産を差し引くことが可能です。
参照:No.4108 相続税がかからない財産|国税庁