ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、「最悪のシナリオ」ともいえる核戦争への懸念がにわかに高まりつつある。実際に核戦争が起きた場合、株価はどうなるだろうか。過去の国際戦争と株式市場の動きを振り返りながら、今後を推測していきたい。

追い詰められたプーチンが握る核のボタン

2022年2月、ロシア軍はウクライナへの軍事侵攻に踏み切った。圧倒的な軍事力で中央政府の「無力化」と首都キエフ制圧を狙ったロシア軍だったが、米国をはじめとする国際的な軍事支援を後ろ盾にしたウクライナ軍が抵抗を続けた。

ウクライナ軍は東部や南部で反転攻勢を強めており、ロシアが一方的に併合した地域の奪還と解放を進めている。ロシア側はウクライナのインフラ施設やエネルギー関連施設、住宅地への攻撃を続けており、依然として両者の激しい攻防が続いているのが現状だ。

戦闘激化のさなかで議論を巻き起こしているのが、核戦争勃発への懸念である。現時点でその可能性は低いとされるものの、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が核兵器使用に動けば、米国・北大西洋条約機構(NATO)が報復措置を取り、全面衝突は避けられないとの見方が強い。

株価を左右するロシア・ウクライナ情勢

いうまでもなく、ウクライナ情勢が世界の株式市場に与えた影響は甚大である。軍事侵攻を機に、投資先を債券などへ移すリスク回避の動きを受けて主要な株価指数は軒並み下落した。加えて、影響による物価上昇や米国の金融引き締めも下押し圧力となった。

ロシアへの経済制裁の強化や燃料供給不足への懸念の広がり、ロシア軍による原子力発電所への攻撃や情勢の緊迫化などが要因となり、株式市場は不安定な状況が続いている。今後も長期的にリスクの大きい懸念材料として、動向に注視していく必要があるといえる。

過去の国際戦争と株価への影響

では実際に、過去の国際戦争の勃発から終戦までに株価はどう変動したのだろうか。過去5つの戦争と侵攻、歴史的出来事を振り返っていく。

まずは湾岸戦争だ。1990年のイラクによるクウェート侵攻をきっかけに、米国中心の多国籍軍が翌年にイラクを空爆して勃発した。原油産油国の戦争であることを背景に、開戦前から原油価格が高騰し、開戦と同時に株価も下落した。しかし、空爆開始から数ヵ月で株価は反騰する結果となった。

2003年のイラク戦争では、経済への影響や化学兵器への懸念から開戦前に株価が暴落した。ただ開戦後は悪材料が出尽くしたことで一転買いが優勢となり、上昇基調となった。2008年の世界金融危機で底を付くも、その後は2011年にかけて上昇している。

2008年のロシアによるグルジア侵攻と、2014年のロシアによるウクライナのクリミア半島侵攻では株価はやや上昇を示すも反発は起きていない。短期間の侵攻であったことや、世界金融危機により影響は限定的だったと見られている。

一方、核戦争の瀬戸際となり、第三次世界大戦の危機に直面した冷戦期の1962年のキューバ危機では、株価が一時大幅に下落するも、その後上昇基調に転じている。前年からの株式市場の調整で、危機発生時には株価が底を付いていたためと見られている。

経済的影響の大きいロシア侵攻と募る不透明感

過去の国際戦争では、開戦後に反騰の動きもあった株価市場。しかし、今回のロシアによるウクライナ侵攻は経済的・社会的な影響が大きく、株価は総じて下落傾向にある。新型コロナウイルスの影響による景気減速や、侵攻に端を発した原油高や物価上昇、金利上昇など、依然として売りが優勢な状況が続く。

ロシアによる軍事侵攻は、さらに長期化すると指摘されている。株価は、突然の暴落が非現実的であっても、大きな反発はないとの見方も出ているのだ。今後の展開としてさまざまな憶測が飛び交う中、ロシアが核兵器の使用をちらつかす事態が起これば、市場はさらに悪化するとの懸念もある。

その威力が限定的であったとしても、戦術核が使用される事態が起きた場合、各国・地域の株式市場が一時的に閉鎖する恐れも否めない。核が使用されれば、局地的な被害にとどまらず、世界規模で影響が出る可能性も念頭に置く必要があるだろう。

核戦争勃発のシナリオは長期的な懸念に

エネルギー問題や各国の物価上昇と、マイナス要因が波及し続ける今回のロシア・ウクライナ情勢。これまでの国際紛争とは異なり、戦闘開始前と開始後にも株式市場は低調で先行きの見えない中、情勢や戦況で変動する株価に市場参加者は一喜一憂を繰り返している。

核戦争の脅威は冷戦後初となる。第二次世界大戦後初の軍の部分動員令を発令したプーチンは、核兵器の使用は「ブラフ(脅し)ではない」と発言した。軍事的に追い込まれたロシアへの警戒感は、次第に強まっている。劣勢に立たされたプーチンが核の使用に踏み切れば、株式市場も大波乱となることが予測されるといえるだろう。

文・MONEY TIMES編集部

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