これまで税金で特にトラブルになったことのない人でも、予期せぬ税金が突然降りかかり、支払えずにそのまま破産してしまうことがあり得る。それはどのようなケースなのか?ここでは、「税金破産」で特に注意したい税金の代表格となる「相続税」を紹介する。

実家が持ち家の場合は特に注意

親が資産家にあたらない人は、相続税について考えたことがないかもしれない。しかし、実家が持ち家なら、一度はきちんと税のことを把握しておいたほうがいいだろう。

相続税の計算に用いる土地の価格は公示価格ではなく「相続税評価額」。これは国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」で調べられる。ただし、立地などの条件によって金額は異なる。不安があるなら、税理士や不動産鑑定士に相談して正確な金額を出しておくとよい。

おおまかな目安として、都内の戸建ての家なら1億円以上の相続税評価額を想定しておくといいだろう。

それを前提に税額を試算してみる。ここでは、計算を単純化するために、相続人は1人(子)で、相続する資産は家だけというケースで考えよう。

例えば、土地の評価額が1億5,000万円なら、そこから基礎控除額の3,600万円を引いた1億1,400万円が課税対象となる。その場合、税率は40%となるため税額は4,560万円。そこからさらに1,700万円が控除されて2,860万円の税額となる。つまり、2,860万円を支払えない場合はそこで詰んでしまうということだ。

破産まではしないとしても、土地を手放して相続税を支払うか、あるいは相続放棄を考えなければならなくなる。故人との思い出の詰まった家屋であれば、不本意な思いをすることになる。

還暦時点の貯蓄額はいくら?

アンケート調査はPGF生命(プルデンシャルジブラルタファイナンシャル生命保険株式会社)が実施した。今年還暦を迎える1962年生まれの男女を対象に、2022年4月にインターネットで調査し、2,000人の有効回答を集計した。

早速、気になる貯蓄額から見ていこう。還暦人2,000人に聞いた、現段階の貯蓄額の結果は以下の表の通りだ。ただし、配偶者がいる場合は夫婦2人分の貯蓄額とする。

〈還暦人の現段階の貯蓄金額〉
貯蓄金額 割合
1億円以上 9.4%
5,000万〜1億円未満 9.5%
3,000万〜5,000万円未満 8.6%
2,500万〜3,000万円未満 1.3%
2,000万〜2,500万円未満 6.9%
1,500万〜2,000万円未満 3.4%
1,000万〜1,500万円未満 9.7%
500万〜1,000万円未満 13.3%
300万〜500万円未満 5.7%
100万〜300万円未満 9.3%
100万円未満 23.0%
出典:PGF生命「2022年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」(2022年6月7日発表)

回答は「100万円未満」から「1億円以上」まで幅広く分散したが、回答の割合が最も多かったのは、「100万円未満」の23.0%だった。「1億円以上」と回答した人も9.4%いた。平均額は3,122万円だった。

子供に遺産を相続したくない親が多い?

ベビーブーマー世代(1946~1964年生まれ)の最高年齢が72歳に達した近年、遺産相続の時期に突入しつつある。特に米国や日本では、ベビーブーマー世代が空前の富を築いたが、それらは本当に相続されるのだろうか?

様々な調査の結果、遺産相続に積極的ではなく「子どもやほかの家族に遺産を残すよりも、自分にお金を使いたい」と考えているなどといった、ベビーブーマー世代の相続に対する価値観が分かってきた。

日本で遺産相続を具体的に検討している親は1割で、「資産は生きているうちになるべく使い、残った分を子どもに遺産相続させる」という親が8割だ。「全部使い切る」という親も1割いる。

事前に親子でよく話し合っておこう

親子でお金の話はしづらいと考える人は多い。しかし、いざという時に悲劇に見舞われることは、親としても子としても望まないだろう。相続や資産管理で気になることがあればうやむやにせず、一度よく話し合ってみることをおすすめする。

文・MONEY TIMES編集部