これまで税金で特にトラブルになったことのない人でも、予期せぬ税金が突然降りかかり、支払えずにそのまま破産してしまうことがあり得る。それはどのようなケースなのか?ここでは、「税金破産」で特に注意したい2つの税金を紹介する。

実家が持ち家なら相続税に注意が必要

親が資産家にあたらない人は、相続税について考えたことがないかもしれない。しかし、実家が持ち家なら、一度はきちんと税のことを把握しておいたほうがいいだろう。

相続税の計算に用いる土地の価格は公示価格ではなく「相続税評価額」。これは国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」で調べられる。ただし、立地などの条件によって金額は異なる。不安があるなら、税理士や不動産鑑定士に相談して正確な金額を出しておくとよい。

おおまかな目安として、都内の戸建ての家なら1億円以上の相続税評価額を想定しておくといいだろう。

それを前提に税額を試算してみる。ここでは、計算を単純化するために、相続人は1人(子)で、相続する資産は家だけというケースで考えよう。

例えば、土地の評価額が1億5,000万円なら、そこから基礎控除額の3,600万円を引いた1億1,400万円が課税対象となる。その場合、税率は40%となるため税額は4,560万円。そこからさらに1,700万円が控除されて2,860万円の税額となる。つまり、2,860万円を支払えない場合はそこで詰んでしまうということだ。

破産まではしないとしても、土地を手放して相続税を支払うか、あるいは相続放棄を考えなければならなくなる。故人との思い出の詰まった家屋であれば、不本意な思いをすることになる。

同居していた場合は特例で相続税評価額が80%減額

亡くなった人と直前に生計をともにしていた家族などは、その住んでいた家を相続する場合、330平方の土地までは特例により相続税評価額の80%が減額できる。

先ほどの1億5,000万円の評価額に及ぶ土地のケースで考えると、80%が減額されると3,000万円となり、この時点で基礎控除額の3,600万円を下回るので、相続税はかからないことになる。

こうした減税手段もあるので、実家が持ち家であれば将来の相続を考え、税理士に相談して相続税額を計算して対策を練っておくことをおすすめする。

暗号資産の税金で破産する?

ビットコインに代表される暗号資産で得た利益の税法上の取り扱いを知らないと、税金を払い切れず破産することもあり得る。知っておくべき要点をいくつか紹介しよう。

雑所得として所得税の対象に

暗号資産で税金がかかってくるのは売却したり、使用(暗号資産で商品などを購入)したりしたときだ。暗号資産の購入額と売却・使用額の差額が利益となり、その利益は原則的に税制上の「雑所得」として扱われ、所得税の対象となる。

なお、ある暗号資産で別の種類の暗号資産を購入した場合も、その時点で元の暗号資産の利益が確定してしまっているので、やはり同様に所得税の課税対象となる。

暗号資産による利益は総合課税となり、ほかの収入(会社員なら給与等)と合わせて課税される。しかし、損失分はほかの収入から差し引けない。暗号資産で損失が生じる一方で、株取引で利益が出た場合でも、その両方を合わせて差し引きできず、株の利益には相応の税金がかかることになる。

株取引での損失と異なり、暗号資産の損失分は翌年以降の確定申告における控除に回せない。ある年に暗号資産で損失が出て、翌年に利益が出た場合でも、その両方を合わせて差し引きできないため、翌年分の利益には相応の税金がかかってくる。

税率は最高55%

給与所得などほかの所得(株取引の利益などの所得を除く)と一緒に課税され、税率は5~45%。住民税も入れると最大55%だ。所得金額が大きいほど税率が上がる。暗号資産取引で大きな利益を得てしまった場合は、注意が必要になる。

例えば、給与所得800万円の人が暗号資産で100万円の利益を得た場合、所得税率は給与所得だけなら23%だったところ、33%にはねあがる。これに住民税が加わると43%だ。

毎月の収入の多くを住宅ローンやカーローンの支払い、貯蓄や運用などに回し、生活費を除いて手持ちのお金をあまり持たないようにしている人は注意が必要だ。予期せぬ税額を支払うため、例えば定期預金を解約してそこから支払うような事態になるかもしれない。

暗号資産で大きな利益を得た場合でも、税金でざっくり半分くらいになると考え、半分は手つかずのまま置いておいたほうがいいだろう。

暗号資産の税金で破産する可能性は?

暗号資産の利益にかかる税金で破産するとすれば、高額の利益と損失が交互にあるようなケースだろう。

例えば、2020年に8,000万円の利益を上げ、2021年に7,000万円の損失があった場合、通算で考えると実際の利益は1,000万円だ。しかし、先に説明したように暗号資産の税金計算ではそうした差し引きができない。2020年分の確定申告を2021年に行う際には住民税も含め、8,000万円の55%分の税金がかかることになる。所得税の控除額を算入すると3,123万1,800円になる計算だ。

実際の利益が1,000万円なので、差額の2,100万円ほどはどうにか用意して納税しなければならない。用意できなければ、最悪破産である。

自己破産で税金は免除されない

投機性を過剰に求めず、余裕のある運用をしていれば、暗号資産も含めどのような投資手段であれ、破産まで至るケースは少ない。

ただ、仮の話として自己破産してしまった場合の税金の扱いが気になる人もいるだろう。自己破産では、借金のほとんど全ての支払い義務は免除される。しかし、結論をいえば、自己破産しても税金の支払い義務が免除されることはない。

そういう理由から、多額の税金をきっかけとする自己破産には慎重になるべきだろう。まずは、しかるべき窓口に延納などが可能かどうか確かめたほうがよい。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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