新型コロナウイルス禍の経済回復への期待から、順調に上昇してきた世界の株価が2022年に入って低調に推移している。感染拡大の長期化や中国のロックダウン、景気後退への懸念などを織り込んだものと見られる。ただ、そのような中でも値上がりを続け、株価が数倍になった銘柄もある。
米国市場を含め株式市場が軟調
アメリカの主要銘柄の値動きを示す指標「S&P500」は、今年6月に年初来で23%の下落を記録した。その後、いったんは上昇傾向を見せたが、今さらなる下落に対する懸念が高まっている。
日経平均株価(225種)は、アメリカ市場のような大幅な下落とはなっていない。しかし、米国株相場の下落に合わせて大きく株価を下げた銘柄もある。
このように、世界各国の株式市場は2022年に入って軟調な動きを続けている。背景には長期化するコロナ禍に加え、止まらないインフレによる消費意欲の減退が景気後退を引き起こす懸念などがあるとされる。
11倍に値上がりした銘柄とは?
銘柄情報を掲載する「会社四季報ONLINE」が2022年上半期の値上がり率を紹介している。2021年12月30日の終値と2022年6月30日の終値を比較する企画で、1位の銘柄は半年間で11倍もの高騰を見せた。
半年間での値上がり率1位は学校の卒業・記念アルバムを制作する会社「マツモト」。1株の価格は1,856円から2万500円に急上昇した。
この間、マツモトは2023年4月期の業績予想を発表し、営業損益が8期ぶりに黒字になると示した。その後、株価はストップ高を交えて急騰し、2万1,450円まで値上がりした。
もっとも、業績予想の発表時期は6月8日で、上半期の終了間際だった。そうしたこともあり、6月末に向けて大きく値上がりした状態で前年末と比較され、値上がり率が1,000%(11倍)となった背景もある。7月に調整局面に入り、1万円近くまで値下がりした。9月に入って株式市場の相場環境が改善したこともあり、1万7,000円台まで値を戻している。
上位は東証スタンダード、グロースが多く
値上がり率2位の銘柄は、美術品の公開オークションの企画・運営を手掛け、メタバースやNFT(非代替性トークン)関連で注目される「Shinwa Wise Holdings」。4.7倍に値上がりした。3位の「キャンバス」は抗がん剤開発に特化した創薬ベンチャーで、この間に株価は3.6倍に上昇した。
このほか、4位の「セイヒョー」、5位の「ナガホリ」も含め、上位5社には共通点がある。上場している市場区分が、最上位の東証プライム市場ではなく、スタンダード市場かグロース市場ということだ。
一般にスタンダードやグロースの銘柄は時価総額や流通株式数が少なく、またもともとの知名度も劣るので、いったん売買の流れができると、大きく値上がりしたり、逆に値下がりしたりしやすい。実際、上半期の値上がり率の6~10位を見ても、3社がスタンダード市場に上場する企業となっている。
それでは、プライム市場への上場企業で値上がり率トップ10に入っているのは、どのような銘柄か。6位の「大阪チタニウムテクノロジーズ」は、高品質の金属チタンで世界首位。ロシアがウクライナに侵攻したことに関連してチタン鉱石の需給がひっ迫し、価格高騰を招いているため、業績の改善への思惑が高まり、株価は3.3倍になった。
同社は2022年5月13日に2022年3月期の決算内容と2023年3月期の業績予想を公表した。2022年3月期は営業、経常、最終赤字が続いたものの、2023年3月期の見通しは、ロシアによる武力侵攻の影響が見通せないとして開示しなかった。その後、8月4日になって、2023年3月期は各損益が黒字転換するとの見通しを発表した。
なお、大阪チタニウムと同業で、より事業規模の大きな「東邦チタニウム」が値上がり率11位に入っている。
テーマ性ある「電池」関連株も
株式市場では、そのときどきに世の中の関心を集める「テーマ株」が人気化することもある。7位の「ダブル・スコープ」はリチウムイオン電池セパレーター(絶縁材)の専業メーカーで、株価は2.8倍に高まった。
世界的に自動車の電動化を進める流れが強まる中、EV(電気自動車)に使う車載電池用絶縁体の需要が高まっている。ダブル・スコープは韓国の電池メーカーを顧客に持っており、その取引数量が増えている。
原燃料費や物流費がかさむ中、増収効果がそれを相殺し、業績を引き上げている。8月12日には営業、経常、純損益が黒字転換した2022年6月中間期の決算を発表した。これに先立つ7月25日には、もともと各損益の黒字転換を見込んでいた2022年12月期の業績予想を上方修正し、黒字幅が拡大するとの見通しを公表している。
大阪チタニウムや東邦チタニウムが調整局面入りし、春につけた年初来高値を超えられない中、ダブル・スコープはほぼ右肩上がりの株価推移を描いている。6月末時点では2,271円だったところ、9月12日時点では、同日の場中につけた2,985円が年初来最高値となっている。
長期的には業績に収束
今日、明日、数分後といった短期的な値動きは誰にも分からない、というのはよくいわれるところ。一方で、長期的な値動きは企業の業績や財務状況、世界経済の動向に合わせて収束していくともいわれる。
この春に株価が急騰した銘柄が必ずしも上昇し続けるとは限らない。だが、値上がりが著しかった銘柄の中に、今後も有望で、まだ急騰の2合目、3合目のような銘柄が隠れている可能性もある。
文・MONEY TIMES編集部
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