フジテレビの情報番組内で複数の地方議会の様子を観察し、居眠りや遅刻をする議員の様子が放送され話題だ。地方議員は住民の代表として選ばれ、高額な報酬を得ていることが多い。議員の態度をめぐる問題や住民の反応、年収をまとめた。

「居眠り議員」とは?なぜ話題?

フジテレビの情報番組「ライブニュースイット」内のコーナー「しらべてみたら」で、地方議会の様子にカメラが密着する企画が注目されている。「観察」によって、議会中に居眠りをしたり、議題と無関係な書類を読んだりする議員が複数いることが明らかになったからだ。映像を見た地域住民からは「何のためにいるのか」「会社だったら叱られる」などと批判の声が上がっている。

地方議員の年収や平均年収との差は?

そもそも地方議会では、議員はどれほどの報酬を得ているのか。

都道府県議員の平均年収は1,000万円超?

総務省が発表している「地方公務員給与実態調査」では、2021年4月1日時点の議員など特別職公務員の平均給料(報酬)が公開されている。それによると、議長・副議長を除く議員の平均月額報酬は都道府県議会で80万9,977円、指定都市の議会で79万1,125円、市議会で40万7,425円だった。それぞれ12ヵ月分に置き換えると、想定年収は以下のようになる。

・都道府県議会議員:年額約972万円
・指定都市議会議員:年額約949万円
・市議会議員:年額約489万円

議長や副議長を務めていると、報酬はさらに高い。実際は期末手当が加算されるため、都道府県議員や指定都市議員は1,000万円を超える年収を得ていると捉えられる。

日本の平均年収は?

国税庁が発表している2021年の平均給与では、1年を通じて勤務した給与所得者1人当たりの平均給与は461万円で、男性が567万円、女性が280万円だった。都道府県議会の平均年収は、会社員の平均額の2倍以上といえる。

「居眠り議員」たちの年収は?

番組内で実際に紹介された議員たちの年収はどのくらいなのか。自治体の資料などを元に計算した想定年収の事例を紹介する。

議会名 月額報酬額
(議員)
期末手当
(年間合計)
想定年収
千葉県議会 約79万円 約426万円 約1,374万円
山梨県議会 77万円 約326万円 約1,250万円
埼玉県
さいたま市議会
約80万円 約380万円 約1,340万円
千葉県市川市議会 約60万円 約286万円 約1,006万円

千葉県議会

2022年4月に放送された回では、千葉県議会を「観察」している。元議長らが居眠りしたり、遅刻を繰り返したりする様子が明らかになった。放送後県民からのクレームが相次ぎ、議会は「議事に専心する」などの申し合わせ事項を決定する。しかし、8月に再度取材した様子が放送されると、再び不適切と捉えられる態度が報じられた。議長が全議員に対し、申し合わせ事項を再送付した。

山梨県議会

山梨県議会では、議員が議会中にタブレットで別の議員のPR動画を閲覧したり、雑誌を読んだりする姿が報じられた。連日居眠りをしていたと見られる元議長を取材しようとすると、自宅の裏口からフェンスを乗り越えて走り去り、乗り込んだ車が急発進する様子も放送された。

さいたま市議会

さいたま市議会では、複数の議員が議会中に目を閉じている様子をテレビカメラが捉えた。議会後、議員に直接取材をすると「うとうとしていた」「集中力が欠けていた」などとコメントしている。

千葉県市川市議会

議題とは無関係な書類を読んだり、読書をしたりしている様子が報じられた市川市議会では、議会期間中に田中甲市長がSNSで居眠りを忠告する動画を発信する事態となった。放送内でも、取材を受けた市長は議員の態度について「たるんでいる」と語気を強めて戒めた。

市長がSNSで「居眠り」指摘、議員定数削減案も

全国的に地方議員の議会に臨む姿勢が問題視されている中、広島県安芸高田市の石丸伸二市長の動向が注目されている。議会中の議員の態度を指摘し、議員定数を削減する条例改正案も提案しているためだ。

安芸高田市では前市長が参院選広島選挙区をめぐる公職選挙法違反事件に関し、河井克行元法相(公選法違反で有罪確定)から現金を受け取っていたことの責任を取り辞職している。その後、石丸氏が2020年8月の市長選で当選した。

石丸市長は就任直後、議会中に居眠りをする議員がいたとTwitterで発信し話題を集めたほか、現在16人である議員定数を半数の8人に削減する条例改正案を掲げている。居眠りなどをする議員を「議会軽視」とし、定数が少なくなれば競争が激しくなり、議員の質が上がるとしている。しかし、議員のほとんどは半減する根拠がないなどとして反対している。

議員の「襟を正す」機会へ

居眠りや読書、遅刻など、会社の勤務時間や会議中であれば問題視される行為だ。会社員の平均給与よりも高額な報酬を得ていながら、議会の職務に真摯に向き合っていない態度を見ると、税金を納めている住民は怒りやあきれを感じざるを得ない。

地方議会の様子は本来公開されているにもかかわらず、実際には住民さえも関心が薄く、現状を知られていないことが多い。そのような中、一部の議会の現状がテレビ報道を通じて全国的に明らかになり、批判も生じた。全国の議会が襟を正す機会になるのではないか。

文・MONEY TIMES編集部

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